今年の刑務所見学② ~岡崎医療刑務所~
笠松刑務所(女子)に続く今年の刑務所見学の2日目は、岡崎医療刑務所です。
(残念なことに、岡崎医療刑務所では、タクシーを呼んでいただいて、刑務官の方と和やかにお話しているうちに、
タクシーが来てしまい、建物の写真を撮り忘れてしまいました!)
岡崎医療刑務所は、愛知県精岡崎市にある、精神障害者及び精神上に異常が見られる者を主に収容するしています男性の医療刑務所です。
現在の建物は、昭和37年時の建物で、既に57年が経過しているそうです。
施設内の土地の高低差が大きく、急な階段が多い建物でした。
見学当時は、144名を収容。
うち、109名が精神疾患を抱えています。
残りの35名は、A級受刑者で、精神疾患のある受刑者のお世話をしたり、刑務所の自炊作業をする受刑者達です。
収容率は、53%だそうです。
精神疾患のある人を収容するニーズは高そうなのに、収容率はなぜ半分くらいなのかとお聞きすると、
①まず、建物が古く、少年刑務所から発展した名残りで、共同室が多い。
精神疾患者は、収容当初は単独室に収容する必要があるが、それが出来ないことが影響しているそうです。
②さらに、精神疾患者を収容しようと思えば、お世話係をしてくれるA級受刑者を確保する必要がある。
しかし、現在、A級受刑者は、PFI刑務所にとられてしまい、なかなか医療刑務所に来てもらえないことも影響しているそうです。
精神疾患では、症状に波がありますが、現在では、本人の同意なしには、強制的医療は行えない。
例えば、状態が悪くなった受刑者に注射を打って鎮静させるなどの医療行為を行うことが出来ないため、本人が落ち着くまで非常に苦労するとのことでした。
そんなこともあって、収容率をあげることが出来ないとのことでした。
ニーズは高いのに、もったいない話です。
特に「個室がない」というのは、純粋な設備上の問題、いいかえると予算の問題なので、本当にもったいない話だと思います。
現在では、長期受刑者を抱える施設が新しい施設に建ち替わる際には、個室化の傾向を示しています。
昼は作業で集団行動をするのに、夜も、共同室に閉じ込めて、人間関係で苦労するのでは、
受刑者が精神的に安定することができません。
その結果、懲罰につながるトラブルを引き起こし、仮釈放をすることが出来なくなるため、刑務所側も困るのです。
(出所時のアンケートでは、刑務所で辛かったことのトップは、人間関係です)。
むしろ、個室に収容して、受刑者が夜は落ち着けるようにして、その代り、昼間はきちんと工場に出て働いてもらう方が、
刑事施設内の規律も安定しますし、懲罰などのトラブルも減って、仮釈放を認めやすくなるため、刑の執行と社会復帰がスムーズにいくのでしょう。
長期受刑者の場合は、モチベーションを長期にわたって維持していかねばならないため、特に、夜は個室化した方が安定した処遇を実施できるのだと、以前訪問した施設の方が言っておられました。
精神疾患者を収容する医療刑務所でも、個室が絶対的に必要なはずなのに、それがなくて、収容率も挙げられず、
現場の刑務官の方々も苦労しているのは、実に、残念な話だと思います。
岡崎医療刑務所で興味深かったのは、精神疾患者たちの症状をふまえた段階的処遇が実施されていることです。
まずは、単独室に収容して安定化をはかり、
次に、生活療法センターという場に移して、例えば、音楽を流しながら、作業をさせたりします。
ここでは、月、火、木、金の13:00~14:00までの約1時間、「レク」と呼ばれるカラオケ、輪投げ、ボーリング、希望者が絵画を描くなどの療法を取り入れているそうです。
さらに、症状が安定すると、
第1作業療法センター、
第2作業療法センターとあがっていくようです。
外部の先生に来ていただいて、窯業に取り組んだり、
園芸なども取り入れており、(ビニールハウスもありました)、
例えば、人の輪の中に入ることが難しい人は、しばらく園芸で花を育てさせるなどして、様子をみるそうです。
また、工場で作業をしている人の中には、黒いスポンジか何かでできた帯のようなものを帽子の上から巻いている人がいるのですが、これはてんかん対策なのだそうです。
てんかん発作が起きると、予兆なく、突然、意識を失って倒れてしまうため、頭をぶつけてしまわないように、
防護具をかぶっているのだそうでした。
ヘルメットでは重いので、そのような素材と形状になっているようです。
先ほど書いたように、本人が同意しない限り、強制的な治療は出来ないため、
状態が悪いときは、突然、どんな行動に出るかわからず、毎日、非常ベルが鳴るそうです。
そこで、強制的に強い薬は使えませんから、説諭やカウンセリングによって本人の状態が落ち着くまで対応する、
たとえそれが意味のわからないことであっても、話を聞いてあげるなどの対処をしておられるそうです。
精神疾患を抱える受刑者の場合、病状の調子が良いときは、治療に同意してくれるのですが、調子が悪くなると、どんな反応をするかわからないそうです。
しかし、この医療刑務所には、やはり他の刑事施設とは違う、「治療的雰囲気」が漂っていて、
最少は抵抗していた人も、自分が飲まなくても、時間になると、薬をもってきてくれるというような経験を重ねるうちに、
「今までいたところとは違う」と感じ始めると、治療に乗ってくるのだそうです。
確かに、最近、新聞で、北欧だったか?、統合失調所の人に対して、日本のように薬で長期入院によるのではなく、
医師や看護師による数名のチームが家に出向いていって、本人と話をして(カウンセリング?)、医療的支援をする、
すると、しばらくするうちに、不思議と本人の症状が治まりはじめ、
自分の中の思いや原因に気づき始めるのか、治ってくるのだという記事を読んだのですが、それとどこか似ているような気がします。
他の刑事施設とは違い、医師や看護師がいて、「治療的雰囲気」が漂う医療刑務所は、何か相通じるものがあるのかもしれません。
排泄物を投げたりするような行動にも出ますが、実は、そういう行動は、薬を飲んでくれさえすれば治まるそうです。
それより難しいのは、そのあとからやってくる、ヤル気がでなかったり、うつうつとした感情になったり、妄想観念を育てたりするような状態だとのことでした。
それを、レクリエーション、作業療法、園芸などで対処していく。
患者の状態や思考に応じて振り分けていき、作業療法を実施していくとのことでした。
我々も現場を見せていただいて、具体的なイメージを持つことができ、とても参考になりました。
今年の刑務所見学も充実した2日間でしたね。
2日目の午前中は、岡崎刑務所を訪問する前に、皆で、竹島に行ってきました。
ご利益ありますように…(^-^)