小池百合子さんの勝利に思う ~保釈における裁判所というブラックボックス~

東京都知事選、小池百合子さんが大勝されましたね。

おめでとうございます。

 

 

 

 

 

 

激しい選挙戦でしたが、ポロシャツでカジュアルな親しみやすさを打ち出していた増田さんに比べて、

小池さんの方が、華がある感じがして、これは小池さんが勝つんじゃないかな…という気はしていました。

(東京は大都市なので、「華」も大切なのではないかという気がします)。

 

しかし、何より大きな力が働いたのは、自民党都連の「推薦候補者以外(小池さん)を応援したら、親族まで除名する」という通告文だったのではないでしょうか。

 

誰を応援するかなんて、各人の自由じゃないの?

何でそんなことまで、あんた達に勝手に決められないといけないわけ?

除名って、なんで、あんた達が私に不利益処分を科してくるわけ?

そんな権利、どこにあるの?

 

皆、素朴な感覚としてそう思ったわけで、だから、自民党支持者の半数以上が、小池さんに投票したのではないでしょうか。

要するに、都連は、「時代錯誤」。

昔の村八分ではあるまいし、もうそんな時代じゃなのです。

自分たちの方が正しいと思うなら、意思決定過程や理由をオープンに明らかにして、皆の同意と共感を得る努力をするべきだと思います。

 

実は、この自民党都連と同じようなことをしている事実が、刑事司法にも!!!

保釈請求における「裁判所」です。

 

この6月1日から、刑の一部執行猶予制度が施行されたのですが、

一部執行猶予制度の適用は、他の罪名については初犯だけですが、薬物犯は累犯でも一部執行猶予が受けられます。

 

(もともと、高止まりで下がらない薬物犯の再犯率を下げるために、

刑事施設内処遇(受刑)から、いきなり社会へ放り出すのではなく、社会内処遇へ円滑につないでいくためにできた制度でした)。

 

施行前はいろいろ言われましたが、いざ実際に施行されてみると、ほとんどの被告人が、一部執行猶予を希望するな…という印象を受けます。

被告人にとっては、やはり1日も早く帰りたいのが本音だし、

薬物犯とはいえ、誰でも、裁判のときは、「もう二度と薬物なんかしたくない。何とかして止めたい。」と本気で思っているのです。

(しかし、身体拘束を解かれると、日常生活には辛いことがたくさんあります。

何も治療を受けていなければ、いくら受刑させても、思考や行動のパターンは同じままですから、むしろ、劣等感が強まり、社会から孤立した状態で外に出てきます。

そして、刑務所では強制的に断たれていた誘惑の手があちこちから延びてきて、再犯してしまうわけです。

そんな中でどうやって薬物の渇望を抑え、現実に止めていくかが問題になります)。

 

弁護側では、一部執行猶予への適合性を主張・立証するために、

治療の取り組みやその成果、本人の真剣さ、専門家を含めた支援体制が構築されていることを主張・立証しようとすることになります。

 

裁判所はこれが嫌なのです。

理由は…、時間がかかる上に、実は、「自分たちには判断できない事項」だからでしょう。

 

裁判官は、事実認定能力はあるのですが、更生の要素を加味した量刑を判断する能力はありません。

事実認定は、あるか、ないか、だけを判断すればいいので、論理的に判断できますが、

量刑は論理だけでは判断できないので、実は、とても難しいのです。

 

ですから、現在の裁判所は、「行為責任主義」を強調して、

本当は、犯罪に非常に大きな影響を与えている、知的障害や発達障害、成育歴、精神疾患、嗜癖の影響などは全く度外視して、そんなものは量刑判断には関係ないと言いながら、刑の重さを定めているのが現状です。

(実際には、非常に大きく関係しているはずだと思いますが…)。

 

しかし、一部執行猶予制度では、執行猶予にする期間や保護観察に付する期間を、判決で決めてしまうわけですから、

本当は、更生に関係する、上記のようなことも加味して、判断しないといけないわけです。

でも、裁判官にはそれは出来ない。

そもそもその能力がない。

 

で、どうするか?というと、薬物依存という精神疾患の内容や、治療活動などの情状立証がそもそも裁判に出てこないようにするために、

①罪証隠滅のおそれも、②逃亡のおそれもなく、

本来であれば、保釈を許可して、身体拘束を解いてもいい事案で、保釈を認めずに、身体を継続して、

裁判中には、治療をさせないようにする、そうすることで、情状立証を抑え込むという手法に出始めたわけです。

 

(ただ、この問題は出始めたばかりで、まだ地域や裁判官によって、判断が分かれていて固まってはいないと思いますが…)。

 

 

 

今回の被告人は、薬物依存の症状はやや重いですが、窃盗や強盗に出ているわけでもなく、

過去の前科はすべて薬物の自己使用・所持だけ、

優しいけど、気が弱い面があり、人から頼まれると断れなくて、人生で挫折したことがきっかけで薬物依存に陥ってしまったという典型的なケースです。

一部執行猶予制度の実施で、薬物再犯率を下げたいというならば、まさにこういう人をターゲットにして、治療していくべきというような人です。

 

田舎から出てきた父母は、真面目にコツコツ働いてきた善良な日本国民そのものです。

高齢の祖母の介護と父の病気で苦しい中、自分たちの葬式代を崩して、息子の保釈金を工面したケースでした。

息子のことをとても心配しているけれど、周囲に相談できる人もおらず、

痩せて、様子がおかしくなっていく息子を前に、どう対応したらいいのかわからず、苦しんでいました。

親も体調を崩してしまい、おそらく、うつ病になりかかっておられたのではないかと思います。

 

そんな中で、国選で偶然あたった弁護士が私で、入院治療の話が出て、本当に喜んでいました。

「まるで神様がおりてきてくれたようだった」と言って下さいました。

それくらい、苦しんでおられたのでしょう。

 

 

今までなら、当然、保釈が認められているケースです。

なのに、保釈請求は却下!

既に2回請求しましたが、2度とも却下されました。

 

罪証隠滅のおそれもなく(だって、検察官立証は終わっている)、逃亡のおそれもない。

その他、改正刑訴法90条の裁量保釈の考慮事由をみても、保釈が認められる事案のはずで、

実際、今までなら、起訴直後の令状部の段階で、保釈が認められてきたケースです。

なのに、係属部の裁判官は、保釈を却下するのです。

 

 

理由を説明しろと求めても、担当裁判官も、高裁も、最高裁も、まともな決定文さえ書かず、何も理由を言おうとしません。

それで通ると思っているのです。

 

理由もいわずに、常識感覚、時代感覚に反した「身体拘束」という不利益を科してくる様子は、

まさに、都連のブラックボックスと同じ!

 

だって、もう再犯したくないから、専門治療を受けて、治りたいと言っているのですよ。

病院も受け入れると言ってくれて、入院予約も取れて、飛行機チケットまで取れていたのですよ。

親は、ちゃんと、現金で、保釈保証金を用意して準備していました。

それを妨害しておいて、理由も言わずに通るなんて、おかしいのではないでしょうか?

 

都連と同じで、こんな時代錯誤は通らないというべきです。

 

被告人も、「なぜ保釈が認めてもらえないのか、全然わからない。

常習性なんて、薬物なら誰でもそうだから、もっと具体的な理由をきちんと答えてほしい。

こっちも具体的に言っているのだから」と、言っていました。

(正論です)。

 

「どうする?もう一部執行猶予の主張は止める?」と聞く私に、

彼は、「たとえ出所後になっても、病院で治療を受けたいし、ダルクへ行きたい。

一部執行猶予も受けたい。」と言いました。

 

じゃ!、ということで、既に2回妨害されていますが、しつこく、しつこく、最後まで保釈請求を続けることにしました。

だって、正しいことを言っているんですもの!

 

小池百合子さんを見習って、筋の通らないブラックボックスの判断は拒否する姿勢を示し続けたいと思います。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。