マザーズ・ユニットの訪問 ~スペイン刑務所訪問記~
5月半ばに、日弁連の人権擁護大会・死刑廃止シンポの関係で、イギリスのベルマーシュ刑務所と、スペインのマドリッド第7刑務所、マザーズ・ユニットを視察してきました。
今日は、マザーズ・ユニットについて、書いてみました。
マザーズ・ユニットというのは、母親と幼い子どもが一緒に住むことのできる、刑務所の母子寮のような施設です。
マドリッド市内の住宅街の中にありました。
ここでは、幼い子どものいる女性たち(薬物犯や窃盗犯などの軽微犯がほとんど)が、個室を与えられて、子どもと一緒に生活しています。
刑務所内で、母子が一緒に暮らしているのです。
定員は、33名(33室)で、訪問時は、17名の母親と18名の子どもが入所していました。
訪問見学を終える夕方ころには、小さい子どもと母親がたくさん戻ってきていて、子どもは中庭を走り回っていました。
子どもはどこの国でも可愛いものです。
刑事施設は、入り口には監視カメラがついていましたが、
中に入ると、団地のような白い建物の中に中庭があり、お砂場やブランコ、水遊び場があります。
刑務所であるとは感じさせない造りになっていて、日本でいえば、ちょうど小さな公園がある団地といった雰囲気でしょうか。
受刑者である女性達は、塀の中と外を行き来していて、朝、食事をとった後、子ども塀の外にある幼稚園に送っていき、
戻って、職業訓練を受けたり、軽作業をしたりした後、午後になると、再び幼稚園に子どもを迎えに行きます。
その後は、自室で食事をとり、子どもと一緒に眠るのです。
GPSなどは持たせておらず、信頼関係で成り立っているとのことでした。
(もちろん、入所時には審査がありますので、危険な人は入ってきません)。
各個室は小さいですが、居間やベッドがあり、簡素なものの、スペイン独特の色のカラフルさで明るい部屋でした。
部屋には、家族の写真(夫や上の子ども)が飾ってありました。
子どもの記憶に刑務所にいたことが残らないように、入所できる子どもの年齢は3歳以下に制限されています。
(ただし、幼稚園の進学の関係など、必要な場合には、延長を認めたりりして、柔軟に対応しているようでした)。
「子どもの福祉」と「母親教育」を兼ねている刑事施設でした。
若い母親を支援することによって、再犯を防止し、犯罪による負の連鎖を次世代に残さず、「子どもの福祉」を図ることは、
社会全体にとって、重要な課題とされているのです。
こんな様子を見ていると、日本の刑務所のように、社会から完全隔離するだけの方法はもう古い、
軽微犯で、更生意欲の高い人については、社会との接点を可能な限り維持しながら、社会の中で処遇していくこと、
彼らが、もう一度、社会の構成員に戻れるように、社会復帰を支援していくことが
刑事処遇の世界的な流れなんだな…と改めて感じました。
日本でも、こういう処遇が当たり前の日が早く来るといいですね。