覚せい剤精神病と闘う ~早期治療の重要性~

弁護人として、覚せい剤の自己使用・所持事案を担当していると、大雑把にわけて(非常に感覚的な話ですが)、

被告人を3タイプに分けることができるように思います。

 

 

 

 

 

 

① 覚せい剤を使用している以上、既に薬物依存症なのだけれど、まだ使用歴は浅く、早期の段階で、比較的症状が軽いと感じる人

② 覚せい剤精神病まではいっていないものの、その手前ランクで、依存症がかなり進行しているな…と感じる人

③ 覚せい剤精神病を発症している人

 

 

①は、接見していて、この人がなぜ覚せい剤を使用し始めたのとか、なぜ今も使用しているのかとか、

どんなときに使用しているのかが、本人の説明や調書からそれなりに理解できる人です。

 

使用する理由は、人ぞれぞれで、

例えば、建設業に従事していて、仕事の関係で現場を数か月ごとに移動してしまい、親しい友人ができにくい。

そんな中、家族も失ってしまって、その寂しさから…とか、

 

人にも優しいけど、その分、自分にも甘い性格、

覚せい剤を使うと、頭の回転が速くなった気がするため使用している。

自分の小ささとふがいなさを正面から認めることから逃げており、

目の前の小さな仕事に、真面目に、必死に、取り組むことから逃げて、誇大な妄想に浸っているとか…。

 

その人なりのストーリーがあって、弁護人が分析することができ、ああ、なるほどな…と理解できるのが特徴です。

 

 

それに対して、②の依存症がかなり進行している人になると、

覚せい剤をどうして使用し始めたのか、どうして今も使っているのかが、彼/彼女の話を聞いていてもよく理解できません。

使い始めたきっかけや、今回再使用したきっかけなど、一応説明はしてくれるのですが、

こちらは実感をともなう形で理解することができず、何が理由なのかわからなくなってくるのが特徴です。

依存症が圧倒し始めるのだと思います。

 

依存症が進行してくると、 弁護で向き合っていても、被害者意識が強くなって、普通ならとらないような挙動不審の態度をとったり、

何度も何度も同じ質問を繰り返したり、

(不安感と、記憶力や事務処理能力の低下を示していると思われます)、

打ち合わせのたびに、「明日の打ち合わせは何時ですね」といちいち確認してきたりします。

(これも不安感なのでしょうね)。

 

そのたびに、安心させてあげるような態度を示し、落ち着かせてあげなければならないので、最初はかなり疲れます。

 

ただし、この②のタイプの人は、保釈をとって、治療へつなぎ、治療を開始して一定期間を経過すると、

次第に目が澄んできて、言葉や態度もしっかりした感じになっていきます。

つまり、治療で「回復したな」という実感がはっきり感じられるのが特徴のような気がします。

 

 

 

最後の③、覚せい剤精神病の人。

精神病を発症していると、最初の段階からその人なりに特徴的な独特の態度を示したり、

一つの事に意味不明な形で固執したりするため、対応が難しく、初回接見時から非常に手こずります。

毎回の接見のたびに、へとへとに疲れるという感じです。

 

この方たちも、もちろん、治療で状態はよくなるのですが、

しかし、最初から存在した独特の不合理さのようなものは、なかなか完全には抜けてくれません。

 

 

なので、依存症にとどまっていると思っていた人が、医師から、これはもう覚せい剤精神病だと言われたようなときは、

とても悲しい気持ちになります。

特に、本来は能力が高い人だったとわかっているようなときには、より一層悲しい気持ちになります。

 

 

個人として悲しいと同時に、こういう人が増えてしまったら、果ては国力の衰退につながるとすら思っています。

 

 

 

薬物依存症の方は、ご家族も含めて、おうちで引きこもってしまっていたり、

逮捕されてしまうと、もう仕方ないとあきらめて、弁護士を頼んで、保釈をとってまで治療につながろうとしない面があるようです。

 

 

しかし、とにかく、依存症が進行してしまわないうちに、

特に、覚せい剤精神病を発症しないうちに、一刻も早く治療につながってほしいと思います。

治療の時期が早ければ、回復の効果も高いと感じるからです。

 

 

今日は、覚せい剤犯に対応している時に感じている感想を書いてみました。

 

 

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