徳島刑務所訪問記

日弁連の人権擁護委員会から、毎年恒例の刑務所見学として、徳島刑務所を訪問させていただきました。

徳島刑務所は、LB指標の受刑者(執行刑期が10年以上で犯罪傾向の進んだ者)を収容する全国7つの刑事施設のうちの一つで、LB指標の受刑者以外にB指標の受刑者(犯罪傾向が進んだ者)も収容しています。

無期懲役の受刑者が多いのも特徴で、覚せい剤や窃盗の罪名が多い他施設に比べて、生命・身体に対する犯罪の罪名が多いそうです。

徳島刑務所では、平成19年11月に、医療問題に端を発して、受刑者が刑務官と衝突する暴動が起こりました。

かっての徳島刑務所では、当時の医務課長が、必要性もないのに肛門に指を突っ込む「直腸指診」をしたり、「ピンチテスト」と称してあざができるほど身体を何か所もつねるなど、虐待ともいえるような不適切な医療行為を繰り返していました。

病状の悪化と苦しさの中、医療を受けられない絶望から自殺してしまった方もいたほどでした。

このような状況が生じた背景には、医師不足の問題があります。

一般社会でも医師不足が起こる中、常勤医師としてへき地の刑務所に来てくれる医師はなかなかいません。また、医師にとってはキャリアにつながらない点も医師を招へいできない大きな理由のようです。

かといって、外部の医療機関を受診させようにも、なかなか受け入れてくれる病院がなかったり、さらには逃走防止のための戒護には大きな人手がとられるため、人員配置の観点からもなかなか医療を受診できません。

刑務所医療の貧弱さは、全国的に大きな問題となっています。

 

訪問した2月3日は、四国でも、前日に雪が舞ったほどの寒さでした。

その中で感じたのは、刑務所の中での一日の重みです。

コートを着込んでいる私たちでさえも凍えるほど寒いのに、受刑者はどれほど寒いことでしょう。

最近は、裁判員裁判では無期をはじめ20年とか30年とか重い量刑が言い渡されるケースも増えていますが、本当に刑務所での1日の重みを理解してくれているのだろうかと思うときがあります。

希望をもてない状況は、人間を絶望させ、刑務官の処遇も困難になります。

人間が希望をもって頑張れるのは、まずは5年程度が目安ではないでしょうか。

それ以上重い刑を言い渡すときには、言い渡す側もそれなりに考えないといけないのではないかと思うのです。

特に、最近は、無期受刑者に仮釈放が認められにくくなり、昔は15年以上受刑すれば仮釈放が認められたりしていましたが、現在では30年受刑しても認められず、事実上の終身刑となっています。

受刑期間が長くなれば、受刑者も高齢化し、将来、さらに深刻な医療問題が起こることも予想されます。

将来につけが回ってきてしまう前に、量刑のあり方や受刑者の更生・処遇のあり方を真剣に考えないといけないのではないかと、改めて感じた訪問でした。

 

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