旭川刑務所訪問記 ~日弁連人権擁護委員会から~
日弁連人権擁護委員会で毎年恒例の刑務所訪問。
今年は、2月14日に、旭川刑務所に行ってきました。
当日は、先週の大雪に引き続いて、再び東京に大雪の予報…。
大阪から旭川には直行便がなく、東京(羽田)を経由せねばなりません。
飛行機に慣れていない上、方向音痴で交通網にうとい私は、前日の予報と東京の厳戒態勢のニュースにびびりまくり…。
大阪発は、朝8時半だから飛行機が飛んでくれたとしても、10時半ころの東京から旭川への便が飛ばなかったら、いったいどうしたらいいものか…。
大阪を出てしまったら、あとはもう賭けだから、行くのはやめた方がいいのではないか…と迷いつつも、
同じく、大阪発のE先生に「先生、行かれますか?大丈夫でしょうか?」と尋ねてみたところ、
「行きますよ。大丈夫でしょう。」のあっけらかんとしたポジティブメールに、とりあえず行ってみることに。
飛行機は、難なく飛んで、無事旭川に着くことができました。
(ただし、その後は、バッチリ欠航していたみたいですが…。
名古屋方面や四国方面から参加予定だった弁護士たちも、飛行機が飛ばなかったらしく、来られませんでした。)
東京は大雪でも、旭川は快晴!でした。
旭川刑務所は、現在、LB:170名、B:79名を収容するLB指標施設です。
LB収容者の場合、罪名は、強盗・強姦・殺人といった重大な罪名が多く、54.8%は暴力団関係者とのことでした。
B収容者の場合は、多いのは、窃盗と覚せい剤です。
また、旭川刑務所は、無期の受刑者を54名収容している点に特徴があり、最高齢は85歳(3名)、52年以上収容されている方もいるとのことでした。
この数字を聞いただけで気が遠くなりそうなくらいで、大変なご苦労だろうと思いますが、
(例えば、大阪などに比べると)比較的規模が小さいせいか、空気は少し柔らかいような気もしました。
あと、外は雪が降り積もっているものの、建物内は暖房がきいているせいもあるかもしれません。
(この点は、本州の刑務所の方がずっと寒いでしょう)。
現在、建て替え中で、居室の一部や工場などの建物が新しくなりつつあり、
医療関係の処置室等も充実して、常勤医や歯科医の確保も出来ているといった面も影響しているのかもしれません。
お風呂などの設備もとてもきれいで衛生的でした。
注目は、建て替え後は、全室が個室!になる予定だということです。
これは全国で初めての試みとのことでした。
従来、この点に関連して問題になってきたのが、「昼夜間独居による脱法的隔離」の問題です。
これは、要件の厳格な正式な法76条の「隔離処遇」とはせずに、
制限区分4種に指定された者を対象にした規則の運用として、昼夜間、単独室に居室指定される者が多数存在していて、事実上の隔離になっているのではないかという問題です。
旭川でも、法76条の隔離処遇はゼロ、隔離によらずに単独室処遇を受けている者の数は、58名とのことでした。
(この中には、閉居罰執行中の人や、反則調査中の人も含みます)。
正式な隔離処遇によらずに単独室処遇をすることは、法の厳格な要件を免れ、反抗的だったり、処遇困難な人を長期にわたって事実上隔離するという問題点があるのです。
しかし、脱法的な隔離が疑われる一方で、現実の刑務所の現場では、対人関係が苦手な受刑者が多く、
本人自身が集団処遇を嫌がったり、共同室を拒否して単独室から出ようとしないという理由によるものも多いとされ、
脱法的隔離と区別しにくい面があるのが現状です。
刑務所側としても、対人関係の不調から本人が工場に出ることを嫌がり、作業拒否されると、懲罰とせざるを得ず、
しかも、工場数が少ない中で、あの工場には行けない、この工場もダメと本人が思い込んでしまうと、
もはや手の打ちようがないという問題も抱えておられるようです。
そんな中で、全室が個室となり、共同室がなくなれば、少なくとも共同室内でもめたために発生していた懲罰がなくなります。
夜は自室で独りになれるのだから、昼間だけでも工場に出てみないかという説得も可能になり、
その説得に応じる人も出てくるかもしれません。
そのため、全国初の全室単独室の試みは、同じく、長期受刑者の処遇の悩みを抱える他施設からも注目されているとのことでした。
ベストは、昼間は集団で働き、会話できる時間も多少はあった上で、夜は単独室というスタイルでしょう。
島根あさひのような社会復帰支援センターなどでは、単独室(かつ、共有スペースあり)がほとんどですが、
LBやB級であっても、全室単独室というスタイルがどのような処遇を生み出していくのか、非常に興味深いところです。
大雪にもめげず、今年も無事、刑務所訪問ができました。
旭川刑務所の方々、どうもありがとうございました。
PS:旭川刑務所のゆるキャラは、「カタックリ君」と「カタックリちゃん」だそうです。
旭川刑務所の背後にある突哨山に群生する「カタクリの花」をトレードマークに、漫画家の新子友子さんがデザインされたのだとか。
私は、カタクリの花を見たことがないのですが、副部長のF先生によると、とても可憐な花だそうです。
【カタックリ君とカタックリちゃん】 【カタクリの花】
PS: さらに、旭川刑務所では、旭山動物園の動物を描いたうちわやコースターの製作をしておられるとか。
旭山動物園で旭川刑務所の商品をみつけたので、コースターを2セット買ってみました。