1 性犯罪事件のタイプ別の対処法
性犯罪事件に対処する場合、大きく分けて、以下の3つのタイプに分けられます。
① 軽微な態様で、法定刑も軽い犯罪
電車内での痴漢などが典型ですが、嗜癖化しているわけでなく、いわゆる「魔が差した」というタイプのものです。
飲酒で気が大きくなっていたとか、電車でとなりにきれいな女性が立って、身体がふれたのでつい触ってしまったといった事案です。
被害弁償や示談により、不起訴処分や罰金処分を目指すべきです。
② 軽微な態様で、法定刑も軽い犯罪だが、嗜癖化しているもの
くり返し行われる盗撮や痴漢(着衣の上から身体を触るもの)などの迷惑防止条例違反や、態様の軽い強制わいせつ、陰部を見せるといった公然わいせつ罪など。
このタイプには、治療が必要不可欠です。
背後に、発達障害などの問題が隠れている場合も多くあり、注意が必要です。
③ 犯行態様が重く、法定刑も重い犯罪
強制わいせつ(態様が重いもの)、強制わいせつ致傷、強制性交等罪など。
量刑上重要視されるのは、被害弁償や示談です。
しかし、本人の人生や更生を考えると、治療的視点からの分析があった方がよいでしょう。
2 軽微な性犯罪で、単発的な類型
軽微な犯罪で、単発的なものについては、弁護活動としては、誠意をもって被害弁償をして示談することと、深く反省することに尽きます。
飲酒が引き金になっているような場合は、深酒を慎むなど生活態度を改める必要はありますが、
単発型のタイプは、嗜癖化しているわけではないので、被害弁償することで自分の行為に責任を取り、反省することで再犯は防止できます。
示談が成立すれば、不起訴処分も十分可能ですし、それが被疑者の更生にもつながるでしょう。
3 軽微な性犯罪であるが、嗜癖化しているもの
軽微な犯罪であっても、嗜癖化しているものついては、治療的対処を含んだ弁護活動が必要不可欠です。
典型的には、繰り返してしまう盗撮行為や痴漢行為などがありますが、嗜癖化している場合は、なぜそのような行為を繰り返してしまうのか、その原因を分析し、性犯罪以外の形でストレスを解消できるようにするなど、有効な対処法を打っていく必要があります。
もちろん、被害弁償をして反省することは必要です。
しかし、それだけでは、被疑者・被告人のおかれた環境が変わったわけではありませんから、また同じような状況に陥れば、同じ行為に出てしまう可能性があります。
くり返せば、どんな軽微な犯罪でも、不起訴処分から罰金へ、罰金から正式起訴へとうつっていき、社会生活が送れなくなってしまいます。
特に、性犯罪は、法定刑は軽微なものであったとしても、周囲に知られた場合の社会的ダメージが大きいため、早い段階で治療的な対処をしていく必要があります。
性障害専門医療センター(SOMEC)へおつなぎして、専門の臨床心理士のアセスメントや、精神科医の診察を受けていただき、治療につなげています。
ご本人には、認知行動療法によるグループミーティングに参加していただき、(必要なら、別途個別カウンセリングをご紹介することもあります)、
ご家族には、家族セミナーをお勧めしております。
治療の継続体制を構築し、その経過を検察官に伝えて、刑事処分の軽減を求めていきます。
このようなプロセスを経ることで、二度と性犯罪行為に出ないで、社会人として生きていけるようにサポートしていきます。
なお、このタイプには、背後に、発達障害等の問題が背景に隠れている場合があり、注意が必要です。
拘りの強さや対人コミュニケーションの障害から、社会生活や対人関係面でトラブルを生じやすく、生きにくいという苦しみを持っています。
その苦痛の解消が、自己治癒行為として、人生のどこかの時点で、性的行為と結びついてしまった場合、性犯罪行為がくり返されてしまう可能性があるのです。
このようなケースの対処には、専門家による治療が必要です。
4 犯行態様が重く、法定刑が重い性犯罪
犯行態様が重く、法定刑が重い犯罪については、被害弁償や示談をした上で、個別の分析と対応が必要です。
罪名でいえば、例えば、強制わいせつ、強制わいせつ致傷、強制性交等罪や致傷罪などです。
背後に、単なる性欲の問題では片づけられない原因が背後に潜んでいるケースも多々あります。
例えば、
・成育歴 (極度の貧困、ネグレクトや過剰な支配による「愛着」の問題、DV・家庭内暴力などの家庭環境)
・児童虐待や性犯罪被害など (子どもの頃、暴力や性的虐待を受けた。性犯罪被害に遭った。親族に性行為を見せられて育った等)
・交通事故や頭部を強打する事故などの影響 (頭部を強打し、脳の衝動制御に支障をきたした可能性等)
・ホルモンバランスの異常
少し珍しいものとしては、
・発達障害があり、本人に性的な問題はないが、性嗜好が偏った共犯を頼って、性犯罪に巻き込まれているケース
などもありました。
重大犯で、長期受刑が避けられない場合は、量刑に影響するのは被害弁償と示談です。
軽微な類型と異なり、治療的な原因分析や更生は重視されない傾向はありますが、
被告人本人の人生や社会復帰にとっては、治療的な視点からの原因分析と対処はとても重要です。
まずは、ご相談下さい。
5 罪名が性犯罪ではなくても、治療の対象になる場合
罪名が性犯罪でなくても、例えば、下着窃盗のように、性的要素が本質に関わる犯罪や、
ストーカー的要素を含む犯罪についても、治療の対象になります。
ご相談下さい。