1 窃盗事件について
窃盗罪には、万引き、スリ、引ったくり、空き巣、車上荒らしなど様々な類型がありますが、その法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
2 不起訴処分や罰金刑ですむ可能性があります
前科がなく今回が初めての犯罪であったり、盗んだ物が少額の物だったり、ほんの少し魔がさした、出来心で盗んでしまった…というような事例では、早期に謝罪して被害弁償をすることで、不起訴処分や罰金ですむ可能性があります。
身体拘束(勾留)までは必要ないと思われる事例であれば、勾留に対する準抗告という手続きを取ることもできるでしょう。
事件が大きくなり、身体拘束が長引けば、それだけで本人と家族の社会生活は破壊されてしまいますから、可能な事案ではこのような対応が必要です。
ただし、被害金額が大きかったり、犯行態様が悪質な場合などは、公判請求も覚悟せねばなりません。
例えば、バイクでの引ったくり事案や、施錠されていた建物・敷地への侵入の事案などは、防犯対策の観点から起訴されてしまうことも多いようです。
3 起訴(公判請求)されてしまった場合
起訴されてしまった場合にも、早期に被害弁償などの対応をし、保釈保証金を準備してもらうなど家族のサポートを得ることで、保釈請求をすることができ、保釈が許可されることは多々あります。
窃盗症やその他の神疾患があるような場合は、治療につないでいく必要があります。
4 起訴後も執行猶予を目指すことができます。
真摯な反省と被害弁償・示談をすることで、執行猶予判決を得ることができます。
財産犯である以上、被害弁償や示談はとても重要です。
例えば、引ったくりは、窃盗の類型の中でも、防犯上の観点から量刑が重くなる傾向があります。
件数が少ないから…、被害金額が少ないから…と安易な対応をしていると、初犯であっても刑務所に行かねばならなくなる可能性があります。
自分が関与していない事件についてはしっかり防御すると共に、認めている事件については、被害弁償を尽くして、反省することが大切です。
5 なぜ窃盗をするのか、理由を分析し、自覚を促す
― 問題を解決し、二度と再犯しないために ―
実は、これが最も重要なことです。
なぜ、被告人は盗むのか?
それをきちんと突きつめて理解し、本人が自覚していなければ、同じことをまたくり返して、再犯してしまいかねないからです。
「楽をして、稼ぎたい」「楽をして、欲しい物を手に入れたい」という典型的な動機の窃盗もあるのですが、最近では、病的な傾向があったり、心理的な影響を示す事例も多くなっています。
犯罪を犯すからには、被告人なりの理由があるのです。
盗む本当の原因を見落とすと、結局、問題を解消できないまま終わってしまい、再犯につながりかねません。
二度と再犯せず、幸せな人生へと転換していくためにも、刑事裁判中に犯罪の原因を分析し、自覚することがとても重要なのです。
6 クレプトマニア(窃盗症)という「病気」である場合もあります
クレプトマニア(窃盗癖)という病気である場合があります。
「割に合わない窃盗」を続けてしまうケースです。
例えば、大量に本を盗み、その中には同じ本が3冊もあるのだけれど、書店でパックされている状態のまま、封を開けてもおらず、古本屋に売ってもいない。
ただ部屋に積み上げているだけ…とか。
到底食べ切れるはずのない食料品を山のように盗んできて、予備の予備の予備が、溜め込まれているとか。
洋服店で棚にかかっている洋服を1メートル分くらいごっそり盗んできたけれど、盗んだ後は、着るわけでもなければ、売るわけでもない…といった具合です。
発症率は、男性より女性の方が多く、摂食障害をはじめとする他の精神疾患を併発している事例も多々くあります。
これは犯罪である以前に、精神の「病気」です。
逮捕された後、本人が病気であることを明らかにし、専門の治療機関につなぐことで、罰金刑や執行猶予判決を得ることができる場合があります。
7 否認事件では、しっかり防御することが必要です
今までは、認め事件を中心に述べてきましたが、「自分はやっていない」「その事件は自分ではない」という否認事件の場合もあります。
そんな場合は、しっかり防御しなければなりません。
犯人ではない、盗んでいないという場合は、自白調書を作らずに、ねばり強く防御して争うことが必要です。