1 殺人・殺人未遂事件について

殺人・殺人未遂事件の場合、裁判員裁判対象事件になります。

捜査段階では、殺人(未遂)罪の罪名で逮捕されている場合であっても、殺意がない場合には、傷害致死罪に罪名が変更される可能性もあります。

 

2 否認事件の場合

否認事件の場合、嫌疑をかけられているけれども自分は犯人ではない、
被害者からの攻撃を受けたために、防衛行為をしただけだ(正当防衛)、
殺意はなく、実行行為もなく、過失傷害にとどまる等の主張がありえます。

また、殺害行為自体には争いがない場合であっても、責任能力に疑いがある場合もあります。

 

3 認め事件の場合

殺意をもって殺害してしまったことは間違いないという認め事案であっても、事案の内容によって、裁判で言い渡される量刑には大きな幅がありえます。

殺人は重い罪名ではありますが、計画的な保険金殺人のような事例は別として、その多くは家族、恋人、知人といった濃密な人間関係の中で、感極まった極限状態の中で行われてしまう犯罪という側面があります。

そのため、量刑に幅があり、必ずしも重い量刑になるとは限りません。
実際、殺人(未遂)事件の被疑者・被告人となられた方には、それまで真面目に社会生活を送ってこられた良識ある方も多いのが特徴です。

犯行に至る経緯や被害者とのそれまでの人間関係、被害者側の問題点(落ち度等)、被告人がおかれていた犯行当時の状況等を適切に主張・立証することで、量刑が不当に重くなることを防ぐ必要があります。

 

弁護活動においては、法曹三者が共通して閲覧できる「量刑検索システム」のデータベースを参照しながら、裁判で重視される量刑要素をふまえた適格な弁護活動をする必要があります。
さらに、データベースの傾向を踏まえた上で、その事案に特有の事情について(過去の事件であるデータベースと全く同じ事件など存在しません)、被告人との接見やご親族等からの事情聴取を始め、様々な証拠を弁護側で独自に収集して、主張・立証していく必要があります。
裁判員裁判では、一般市民である裁判員の方々にも事情を理解していただけるように、わかりやすい主張・立証と共感を得られる弁論を組み立てていくことが必要です。