心理士のカウンセリングによる治療(原因分析・更生・再犯防止)

罪名にかかわらず、心理士と連携し、心理士のカウンセリングを活用することを積極的に取り入れています。

精神疾患がある場合 → 医療

高齢者・障害者(知的障害・その他)の場合 → 福祉

生育歴や家族歴、過去の人生経験、虐待などの影響 → 心理

 

典型的には上記のようなつながりになります。

現在の刑事裁判では、「心理」はあまり活用されていませんが、
実際の被告人の方々をみると、「精神疾患ではないし、65歳以上の高齢者でもない。障がい者でもない」という方は非常に多く、心理が必要とされる場面はもっと多いはずです。

そのようなケースでは、よく分析していくと、
成育歴や家族歴、過去のつらい人生経験などが、本人には自覚しにくい「価値観」や無意識的な「信念」「物事のとらえ方」「反応の仕方」となり、「行動パターン」となって、犯罪に影響を与えていることが多くあります。

例えば、

① 生育歴や家族歴、結婚後の生活などが影響を与えているケース
このようなケースはかなり多いです。
親子間の葛藤や夫婦間の葛藤などは、あらゆる罪名で問題になります。
なぜ万引きするのか、理由がよくわからない常習的な万引きや、薬物依存症の事案でもよくみられます。
犯罪につながってしまう場合は、社会生活に大きな支障が出ているわけですから、心理士によるカウンセリングを受けて、心の整理をすることをお勧めします。

② 大切な家族を亡くした喪失感や人生のつらい出来事が犯罪に影響を与えているケース
つらい感情を、自分自身でとらえて、言葉で表現すること(言語化)が苦手なために、感情の浄化ができず、もやもやとした感情に支配されて、犯罪行動に出てしまうケースもよくみられます。

③ 幼少期の虐待が犯罪に影響にを与えているケース
虐待を生き延びるために身に着けた行動パターンや価値観が、無意識に犯罪に影響を与えている場合です。
虐待は、難しく、重いテーマなので、心理士の協力を得ることが不可欠だと思います。

④ 親子間の暴力のケース
などについても、新たに取り組んでいます。

このような場合は、心理的なカウンセリングを実施して、その人の「信念となっている価値観」や「犯罪に影響を与えている過去の人生経験」などをさぐり、
それが「犯罪行動につながるパターン」を分析して、自覚を促します。

そして、「犯罪行動以外の対処法・解決法」を模索することで、再犯防止つなげていきます。

刑事裁判では、量刑の主張・立証につなげていきます。

 

※ なお、精神疾患を発症している方や、知的障害等がある方の場合など、カウンセリングが向かない場合もあります。

クレプトマニア(窃盗症)・性犯罪(盗撮・痴漢・強制わいせつなど)に対する認知行動療法

クレプトマニア(窃盗症)と、性犯罪(盗撮、痴漢、強制わいせつなど比較的軽微なもの)については、専門的な治療機関(SOMEC)による、認知行動療法によるグループワークがあります。

特に、常習化していたり、再犯をくり返しているケースでは、受講をお勧めします。

刑事裁判では、このような治療を実施して効果が出ていること、今後も継続できる治療体制が整っていることを主張して、不起訴処分、執行猶予判決、より軽い量刑の判決を目指していきます。

 

心理士のカウンセリングや認知行動療法による治療と刑事裁判の流れ

刑事裁判では、
①勾留されている場合は、保釈を得て、
②在宅事件の場合はそのまま、
刑事裁判と並行して、心理士のカウンセリングや、認知行動療法によるグループワークを受けてもらいます。

カウンセリングについては、心理士と協議の上、適切な回数を受けてもらい(3回~5回程度、必要な場合はそれ以上)、
認知行動療法によるグループミーティングは裁判の日までに可能な回数を受けてもらった上で、
心理士らに、カウンセリング報告書や治療経過報告書を発行してもらいます。

そして、その内容を、法廷での尋問に反映するべく、弁護人との間で十分話し合い、被告人に自分の犯罪やその原因をふり返ってもらいます。

裁判では、法廷で、制限時間以内に、簡潔に、裁判官に理解してもらえるように、わかりやすく話すことが求められます。

ですから、そのための準備をすることが、被告人にとって、自分の過去の考え方や行動を整理して、言語化し、浄化する作業につながっていくのです。

公判では、カウンセリング報告書/治療経過報告書を書面で証拠として提出し、

家族の情状証人尋問と、本人の被告人質問を行って、

分析内容を、①犯罪の犯情として、かつ、②今後の再犯防止と更生のための対策(一般情状)として主張・立証し、できるだけ量刑が軽くなるように目指していきます。