覚せい剤累犯裁判記 ~保釈をとって治療へつないだケース~

先日、名古屋地裁で、覚せい剤累犯の方の第1回公判がありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この事例は、複数回の受刑経験がある方だったにもかかわらず、第1回公判前に保釈を認めていただき、

病院に入院して、薬物依存症の専門治療プログラム(条件反射制御法)による治療へつないだケースです。

(保釈請求却下 → 弁護側から準抗告 → 保釈面談の末、準抗告認容 → 保釈許可!という嬉しいケースでした)。

 

 

治療につながっているケースですから、罪自体は認めている「認め事件」です。

検察官の冒頭陳述のあと、証拠調べですが、覚せい剤の認め事件ですから、証拠関係は簡潔で、全て同意。

情状証人の出廷のための日程調整の必要や、ある程度の治療期間を確保して医師の報告書をいただくために、

今回は検察官立証までとしました。

次回が弁護側立証で、証人尋問の時間や被告人質問の時間を調整します。

このケースでは、メインは弁護側の情状弁護ですから、第1回公判は形式的な審理になり、20分程度で終わります。

 

 

この事件では、弁護人が複数ついており、私は主任ではなかったので、多少ボーっとしていても許されました。

なので、頭の中では、初めての名古屋の法廷の感想を考えていました。

 

 

名古屋の法廷は、裁判官の訴訟指揮も丁寧だし、検察官の要旨の告知もとても丁寧でした。

 

建物は煉瓦つくりで、法廷内はほぼ大阪と一緒でしたが、

(ただし、検察官と弁護人の位置は逆で、被告人が出てくるドアのある方が弁護人席だとのことでした。

また、弁護人の前に座る被告人の椅子の前に、さらに長机が置いてありました。

これは大阪にはないのですが、何のために置いてあるのでしょうか?

被告人がメモをとるため?

だとしたら、すごく親切だな…なんて、考えていました)、

外の廊下や椅子は、名古屋の方が断然きれいだな、

裁判官の訴訟指揮はとても丁寧だけど、それだけに、裁判官の法服の襟元が開いていて、くだけて見えてしまうのが惜しい!

もったいない感じがするな。

ノーネクタイは全然かまわないんだけど、法服の首元のボタンさえ止まっていれば、黒でバッチリきまっていてかっこいいのに…。

そもそも、法服の襟元って、どんな形をしていたんだっけ?

この間、法廷で、裁判員裁判を傍聴したときは、ネクタイが見えていた記憶があるから、ということは法服の襟元は本来開いているということか。

普段から見ているはずなのに、審理ではどうしても裁判官の表情を見てしまうから、

法服の形は?なんて言われても、全然思い出せないな…。

 

 

…なーんてことを考えていると、次回の証人尋問と被告人質問の時間の話に。

 

 

 

弁護側は医師を含め、3人の情状証人を請求(累犯であることも考慮して、人数はちょっと多めでした)。

15分、5分、5分、被告人質問15分で請求。

弁護側が行っている依存症治療プログラム(条件反射制御法)は、今はまだ一般に広く普及している治療法ではなく、

これから知っていただきたい治療法なので、どうしても説明する必要があります。

そのために、ある程度の尋問時間が必要だったのでした。

 

 

それに対して、裁判官が、検察官に反対尋問に必要な時間を聞くと、

検察官の答えは、「同程度」。

 

私は、「ええっ!、この事案で同程度!。あんた、いったい何聞くつもり?」と思ってしまいました。

 

 

確かに、反対尋問時間を聞かれたときの答えは、「同程度」か「半分程度」なので、

上記のような細切れな時間を言われると、半分程度と言いにくくて、とりあえず同程度になったのだろうなと思います。

しかし、覚せい剤の認め事件で、要するに「薬物依存症でこのままではダメだから、治療します」と言っているだけの事案で、

合計40分も反対尋問!

ほんまかいな!?、何を聞くの?

 

 

内心驚きつつも、確かに、条件反射制御法については、私は理解しているけど、検察官は知らないわけだし、

医師が出てくるなら、聞きたいことがたくさんあるんだろうな、

被告人にもいろいろと聞くことがあるんだろうな…と思い直しました。

 

 

すると、裁判官が、「では、次回の審理は1時間半をとります」と。

 

ええっ!、1時間半!

単なる覚せい剤の累犯事件で、全部認め、証拠も全部同意の事案なのに、1時間半もとってくれるわけ?!

 

 

私としては、事前に相弁護人らに聞いた名古屋の情報等から、1時間程度は何とかとってもらえるだろう、

でも、それ以上は厳しいだろうから、何とかコンパクトにするしかないな、

場合によっては、情状証人を1人削ろうか…と考えていたので、すんなり何も言われず1時間半もとってもらえたことは、

驚き、桃の木、山椒の木!

 

(裁判官は、弁護人が40分というし、検察官も同程度というし、40分と40分を足して、論告・弁論で10分、合計90分とされただけなのでしょうけど)。

 

 

おそるべし、名古屋!

私は、大阪が刑事弁護のメッカだと思っていたのですが、

名古屋はそれ以上に熱心なのかもしれないと、正直びっくりしました。

 

 

それとも、名古屋は事件数に比較的余裕があるのでしょうか。

(事件数が多い大阪では、例えば1回結審事案の基本枠は40分です)、

もしくは、この事件が少し特別だったのでしょうか。

(被告人が保釈されていて、初犯かと思いきや、ふたを開けてみると、複数回の同種前科がある累犯だったので、

証人の重複や時間等を問い詰めたりはせず、そのまま時間をとってくれたのでしょうか)、

何とも図りかねました。

 

 

当初はコンパクトにまとめねばならないと考えていた私ですが、

時間は想定以上に認めてもらえたので、しっかり頑張らねばならないな…、

でも、そんなに大げさな話なんて何もしてないんだけどな…と、やや困惑も感じた名古屋の法廷だったのでした。

 

 

PS:だって、先ほども書いたとおり、薬物依存症で、刑務所に入れたところで治らないから、医療で治療しますという

非常にシンプルで当たり前のことを言っているだけですもんね…。

効果はないとわかっている今までのやり方を繰り返している方が、よほどおかしいと思うのですが、

皆さんはどう思われますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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