治療的司法研究会 ~小早川明子さんにお会いしてきました~

昨日(11月6日)は、東京の立正大学品川キャンパスで行われた治療的司法研究会に参加してきました。

(そんなわけで、今日は、ちょっとお疲れ気味です。移動って何もしてないのに、結構しんどいですよね)。

 

 

 

 

 

成城大学の指宿先生や立正大学の丸山先生が主催しておられ、毎回、治療的司法にかかわる各方面の方々から発表があります。

 

今回は、ストーカー問題のカウンセリングで知られるNPOヒューマニティーの理事長小早川明子氏の講演:「ストーカーの足抜け支援」と

北千住パブリック法律事務所の山田恵太弁護士からの 障害のある人の刑事弁護の実践報告でした。

 

小早川さんは、アパリの尾田さんと長年親しくされているようで、以前にも尾田さんを通じてお会いできるのではないかという機会はあったのですが、うまく日程が合わず、お会いできないまま、今日まできていました。

今回の11月6日の治療的司法研究会も、私に裁判員裁判の日程が入っていて、「ああ、今回もまたダメだったか…」とあきめていたのですが、

なんと、なんと、既に裁判員に招集もかけ、審理が1カ月近くに迫った段階になって、諸般の事情が勃発し、裁判員裁判の期日の変更がなって、お会いできることになったわけです。

 

 

小早川氏は、ご自身がストーカーのカウンセリング支援にかかわることになった経緯を話して下さりましたが、大迫力!!!

かっては、会社経営者として成功される中(女性経営者で成功してるってカッコいいですよね)、ご自身がストーカー被害にあわれたそうです。

そのとき、小早川さんが、一番切実にほしかったものは、

自身が直接相手に会うのではなく、誰か自分の代わりに相手に会ってくれる人、

自分を守って、盾となってくれる人だったそうです。

 

自分が一番してほしかったことをして、ストーカーに苦しんでいる人を助けるべく、

カウンセラーとなった現在は、被害者にかわって、加害者に会いにいき、治療や回復に必要な手段へとつなげ、問題解決にむけていく活動をされているとのことでした。

 

ストーカーは、他の犯罪類型の被告人達とはかなり異なり、加害者は、煩悩の炎に身を包まれて、焼かれるがごとき苦しみにもだえています。

煩悩の炎にもだえているまっただ中にいる彼らに会いにいって、セラピーを施していくというのは、並大抵のことではないと思います。

 

 

 

学べることは本当にたくさんあったのですが、その中でも、面白いな…と思ったのは、

①相手には自分を嫌う自由もある。

(多くのストーカーは、一度結んだ縁を切るのは悪だと考えていて、妙に律儀だったりして、「約束を守れ」、「責任を取れ」、「誠意を見せろ」という言葉を口にするそうです。

これは、同じく、治療的司法に参加しておられる立命館大学の中村正先生が、

以前に何かの研修でおっしゃっていたことで、印象に残った言葉なのですが、

交際の合意というものは、相手が心変わりすればそれまでで、破棄されるものなのであり、それを受け入れなればならないのですが、DVに陥るような人はそれがなかなか出来ないのだそうです。)

 

②自分の感情は、自分で処理しなければならないのだ。

(相手に見捨てられた不安、孤独感など。

辛いのはわかるが、それは、最後は自分で引き受け、自分で処理せねばならない)。

 

③常識を守れ、

ということを説いていかれるというところでした。

 

人間は、互いに支えあいながらも、最後は一人で生きているのであって、

永遠の安心の保障や永遠の幸福の保障などというものは、存在しない、

自分の感情や、受け入れがたい過去・現在の状況、将来への不安などを、全部誰かのせいにして、引き受けてもらうことなどできないのであって、

一人で引き受けながら、最期のときまで、生きていかねばならないのだ、ということなのでしょう。

 

他人が期待にこたえてくれなかったから、自分の人生がこうなった…という煩悩の炎は、

基本的には、その人自身の弱さから来るのでしょうが、

すべてがその人だけのせいかというと、そうでもないところもあります。

例えば、ストーカーには、幼少期に厳しく、過酷な環境におかれているケースも多くて、他者の反応に、普通の人以上に強く反応せずにいられない生い立ちの影響などもあるようでした。

(センサーが強く立っている状態、というような言い方をされていました)。

 

しかし、そうであっても、最後にその生い立ちを乗り越えていくのは、自分自身の力以外にはありません。

あとは、そこに適切な支援があるかないか、という問題なのでしょう。

適切な支援やアドバイスがあることで、紙一重で、人生の選択が変わることもあるのだろうと思います。

 

それにしても、まだ身体拘束されていない段階で、煩悩の炎に包まれているストーカーに会いにいかれて、ときに、加害者、被害者双方の命を守るというのですから、小早川さんの活動は、本当にすさまじいですよね。

 

私の場合、まだストーカーの扱い件数は非常に少ないのですが(彼らはあまり相談に来ないんです)、基本的に、身体拘束されている人が対象になります。

身体拘束されていない方が相談に来られたこともありますが、結局、つながりませんでした。

身体拘束されていない加害者と弁護士がつながる動機って、なかなかないですよね。

 

身体拘束されていない場合は、加害者自身がこの事態に何かとても困っていて、何とかしたい、自分を変えたいと本気で思っていないと、更生保護をかかげて治療につなげるタイプの弁護士とはつながりませんから。

 

小早川さんの場合は、後ろに被害者がいるから、この人に会えば被害者の話が聞けるかもしれない、被害者の反応を、たとえわずかであっても、何か得られるかもしれないと思って、加害者が小早川さんに会いに来るのだとのことした。

非常に納得しました。

 

その後の懇親会も、千葉大学の後藤弘子先生(少年法)もまじえ、とても楽しいひと時だったのですが、

大失敗は、写真を撮るのをすっかり忘れてしまっていたこと!!

 

ホテルに帰ってから、「あ、写真撮るの、忘れた!」と思い出しました。

あちゃー、何たる失敗、せっかくの機会だったのに!!!(このブログだって書かないといけないのに…涙。)

 

ま、でも、終わってしまったことを嘆いていても仕方がありません。

小早川さんも、この治療的司法研究会の雰囲気をとても気に入って下さっていたので、また、お会いできる機会はあると信じて、次はしっかり写真を撮るのを忘れないようにしたいと思います。

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。