性犯罪事件における精神科医・SOMEC(性障害専門医療センター)との連携

1 性犯罪事件を治療へつなぐ

性犯罪事件では、ご本人は自分の性癖をどうすればよいかわからないまま、周囲の信用も失い、みじめな気持ちで辛い日々を過ごしています。ご家族も性犯罪を起こした本人にどう対処してよいかわからない上、冷たい世間の目をおそれて、相談するところもないままに孤立しています。
このようなときこそ、専門のお医者さまの診察を受けてご意見をいただき、専門機関による治療を受けるべきです。
性的な問題であっても、科学的な目で問題を検討し、適切な治療をすることで、平穏な日常生活を送れるようになるのです。

 

2 精神科医と専門治療機関へのご紹介

当方では、治療を希望される被告人やご家族の方々に、この分野を専門に活動されている精神科医福井裕輝先生と福井先生が主催されている「性障害専門医療センター(SOMEC)」をご紹介しています。

まず福井医師に「裁判記録を送付」して事案を検討していただきます。

① 保釈が可能な事案 → 保釈をとって治療につなぎます。

グループミーティングなどに参加していただきます。
② 保釈許可が得られない事案 → 事前に精神医学的な質問検査による心理テストなどをした上で、福井医師に拘置所へ行っていただき、面会・診察していただきます。
そして、「意見書」をいただいて、裁判の量刑に反映させたり、社会復帰にそなえる刑事弁護活動を展開します。
医師である福井先生の意見書がきっかけになって、裁判所による正式な鑑定がなされたケースもあります。

③さらに、事案によっては、心理士によるカウンセリングを実施することもあります。

②の精神科医による分析は、「疾患」に焦点があたっています。
しかし、その診断結果によっては、明白に「疾患」とまではいい難い場合とか、少なくとも裁判で主張するのは難しいような場合もあり、もう少し被告人の個人的な事情(成育歴や環境の影響、内面的な性格傾向や対人パターンなど)に焦点を当てたい場合などがあります。
そのようなときには、③の心理士の投入が有効に機能することがあります。

確かに、「性犯罪」というくくりや「罪名」のくくりで、ある程度の共通した特徴や傾向はあるのですが、だからといって、どの被告人もみな同じ原因で犯罪を犯しているなどということはありえません。
(その点、「性欲」だけを原因ととらえている従来の刑事裁判は遅れていますよね)。

被告人には、皆、「個性」があるのです。
「個別の原因」といってもいいかもしれません。

それを無視して、十把一からげに論じることはできません。
大きな特徴や傾向を踏まえながらも、その被告人の「個性」や「特徴」を見極めて、真の原因を追っていく姿勢が大切だと考えています。

 

例えば、性犯罪では、性嗜好障害はだいたい誰にも見受けられますが、他にも、

・発達障害傾向

・愛着スタイル

・前頭葉機能障害(交通事故その他の原因で、頭部を損傷した経験がある場合などは要注意)

・ホルモン異常

などいろいろなものが関係していることがあるのです。

 

④さらに、ストーカー事件などでは、大きな事件に至る前の小さな事件の段階で、(殺人や傷害に至ってしまう前、純粋なストーカー規制法違反、脅迫程度の段階)、刑事裁判で身体拘束されていることを利用して、精神科医による診察の実施と刑事施設におけるカウンセリング実施の試みなども行っています。

 

3 治療の内容について

(1) 対象となる方々

①性犯罪事件の被疑者・被告人とされた方々
②罪名は性犯罪ではないが、ストーカー事案の加害者となってしまわれた方

例:別れ話のもつれから、相手に何度も連絡したり、相手の家に押しかけたり   しているうちに「脅迫罪」や「住居侵入罪」の罪名で逮捕されてしまった。
例:別れ話の中で、話し合いに行ったものの、相手の一言にかっとなり、殴りつけたら「暴行罪」「傷害罪」で逮捕された。
上と同じ事例で、自殺するふりをして見せようと思って持っていった包丁で、相手を刺してしまい、「殺人未遂罪」で逮捕された。

 

(2) 治療の方法

性障害専門医療センター(SOMEC)(東京所在。または大阪出張)で、専門治療を受けていただきます。
SOMECでの治療は、これまでは東京でしか行われていませんでしたが、平成25年8月から、月1回、大阪で出張診療・グループワーク等が行われることになりました。
そのため、東京までの交通費の負担が大きく、今まで治療をあきらめておられた関西圏・関西以西の地域にお住まいの方々にも、手軽に治療を受けていただけることになりました。(大阪又は東京までの交通費はご自身でご負担下さい)。
当職も新幹線や特急(例:サンダーバード等)を利用して出張可能な範囲の事件には対応しており、福井先生の治療につないでおります。まずは、ご相談下さい。

 

(3) 治療の内容

① 認知行動療法によるグループワークです。

東京では、毎週平日3時間、最大5名のグループワークを行っています。
大阪(関西)では、月1回の大阪での出張診療・グループワークが行われます。
東京または大阪で、月1回、平日3時間、最大5名のグループワークに参加していただき、あとはメールか郵送によるホームワークをしていただきます。

東京では、「犯罪の種類」と「重症度」によって曜日・時間帯ごとにグループ分けがされています。
ご本人が該当するグループワークのうち、都合のよい時間帯にご参加下さい。
なお、保釈中の方には、保釈専用のグループがありますので、そこに参加していただきます。

大阪での出張診療の開催日については、SOMECへお問い合わせ下さい。

② プログラムの大まかなテーマ
◇ 1年目(基盤つくり)
・動機付け
・ストレスのマネジメント
・怒りのコントロール
・被害者への共感
・対人関係スキル  etc

保釈中の方専用のプログラムでは、
・内省プログラム
・被害者への共感 などに重点がおかれます。

◇ 1年経過後にもう一度アセスメントし直します。
不安定な状態であれば、治療の継続を勧めます。
安定している方は、ご本人の希望に従います。
例えば、犯罪に及ばなければよいという方で、経過がよければ治療を終了する。欲求事態を消したい方は治療を継続するetc

◇ 2年目
さらに治療が必要な方を、同じ疾患・同じ症状でグループ化します。
ex うつ病。発達障害。健常者など。

◇ 3年目
再びアセスメントをし直して、さらに治療が必要な場合は個別対処へ。

③ 必要な場合には、ホルモン療法(内服薬とホルモン注射)も行っています。

 

(4) SOMECの費用について

①  月1回のグループワーク参加コース → 東京で参加の場合:月2万5000円
→ 大阪で参加の場合:月2万8000円
(あとは、メールか郵送によるホームワーク)
週1回のグループワークに毎週参加をご希望の場合(東京のみ) → 1回9000円

② アセスメント料(初回のみ)   2万円
成育歴や犯罪歴をきき取ったり、知能検査を行ったりします。

③ 脳画像や投薬が必要な場合は、実費となります。
ex MRIで約2万円、SPECTで約4万~5万円、PETで約7~8万円
投薬は、最大で月5000円くらい

④ 裁判に関係する費用
・意見書作成 → 20万円
・治療計画案作成のみ → 7万円
・証人として尋問に出廷  → 10万円程度

※ 交通費等の実費は別途いただきます。

 

(5) その他セミナーなど

① 家族支援セミナー
月1回、最大5名のグループでの直接指導。6回で終了。
2名1組(例:父母)で参加が原則。1回2万円。
1名で参加(例:奥様1人)の場合は、1回1万5000円。
内容
○性犯罪のメカニズムの理解
○再発防止モデルの習得 → 本人にどう関われば再犯を防げるか、対処法を理解する。

② 知的障害のある方のための専用グループセミナー
親子で参加することを前提にご参加いただきます。
回数は予め決まっていません。
月1回のグループワーク参加コース → 月2万5000円
(あとはメールか郵送によるホームワーク)
週1回のグループワーク参加コース → 1回9000円

③ 保釈中の方の専用セミナー
「内省プログラム」と「被害者への共感」に重点をおいたプログラムです。

 

(6) 弁護人の立場から

周囲からは、単に「性的興奮を我慢できなかっただけ」「変人だ」などと見られてしまう事件でも、福井医師の心理テストと診察で、脳に機能障害があることが発見された事例は多々あります。
素人目ではわからないことは多いのです。とにかく、専門医による診察を受け、ご意見をうかがってみる。
それだけでも、とても価値のある貴重なことではないでしょうか。
今まで気づいていなかった、気づけなかった問題や障害に気づけるチャンスととらえましょう。

刑事事件で裁かれ、性犯罪者として扱われることは、被告人にとっても、家族にとっても、一生の問題です。
刑事事件になってしまったときこそ、専門医の診察を受けることを強くお勧めいたします。

 

 

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