再犯防止対策室を初体験しました @大阪地方検察庁

戎さんも終わり、そろそろ正月も終わりに近づいてきましたね。

今日行った大阪拘置所では、まだ受付けに、しめ縄が飾ってありましたが…。

 

 

 

 

 

今日は、検察庁の再犯防止対策室を初体験した、今年の初仕事についてお話したいと思います。

今年の初仕事は、正月明け早々の1月5日。

障がい者刑事弁護事件として配点された被疑者国選事案で、釈放された被疑者の最寄りの区役所への生活保護申請に同行し、その後、窓口で探してもらった救護施設まで被疑者を送り届けるというものでした。

 

障がい者刑事当番の待機日は、年の瀬も押し迫った年末。

配点があり、接見へ。

まだ若い男性でしたが、まったく身寄りがなく、病気になって栄養失調で倒れていたところを病院へ運びこまれ、その後、救護施設でしばらく生活していたものの、うまくいかず、軽微犯罪を犯してしまったというケースでした。

本来は、犯罪性は全くない人で、私がこれまで経験してきた事例の中で、最も犯罪から遠いケースでした。

 

日本でもこんな人がいるんだ、

むしろ、こういう若者は、今後増えていくのではないか、という驚異を感じた面もあります。

 

問題の本質は、

・幼少期の母子関係、

・成育環境の劣悪さ、

・孤独、

・社会の側の支援のなさ、

・厳しい労働環境、
(長年真面目に勤めていても、体調が悪くなった途端、休みももらえず、やめさせられる保障も愛情も全くない世界)

・それらが積もり積もった結果の病気、でした。

 

逮捕によって、受給していた生活保護を打ち切られてしまい、次の行先を探さねばなりません。

しかし、逆にいえば、とりあえず、一時的な住まいを確保して、生活再建の目途さえつけば、不起訴処分が得られるだろうというケースでした。

 

翌日、さっそく検察官へ電話しましたが、検事はもう年末年始の休みに入ったというのです。

うっそー、何それ?!という気分でした。

正月が明けるまでは、検察庁だけでなく、役所も、支援団体も皆、何もかもお休みです。

 

困った、10日満期では間に合わない…と感じた私は、検察庁の事務に、

「一時的に受け入れてもらえる先を探すつもりはあるから、勾留延長してほしい。」旨、検事に伝言を残そうとしていました。

 

そのとき、ふと、「待てよ。社会復帰支援室というものがあったじゃないか」と思い出したのです。

 

社会復帰支援室というのは、東京地検に平成25年1月にできた、障がい者や高齢者など社会的支援を必要とする被疑者を福祉につなぐ部署で、東京地検では、3年間に1200件以上の相談に対応してきたというところです。

社会福祉士も何名か正確にわかりませんが、待機しているところです。

 

その後、東京だけでなく、各地の検察庁に設けられ、大阪にもあると聞いていました。

しかし、実際にその部署が担当する事件にあたったことはなく、実際はどんな活動をしているのか、よくわからなかったのです。

 

弁護士としては、検察庁が社会福祉士も雇用して、そういう取り組みをするのはとても良いことだという気持ちはあるものの、検察官のすることには、本質的に疑いの気持ちがわいてしまいます。

例えば、東京地検の場合、「ドキュメント・東京地検社会復帰支援室、~3年間で1200件!!その驚きの内幕~ 「お、新しい彼女かい?」などと題した資料があって、素晴らしい活動をしていることがアピールされているのですが、

 

3年間で1200件以上、

しかも、場合によっては、釈放した被疑者が地図を渡してもたどりつけないために、福祉事務所や診療所まで検察庁の職員がバスに乗ってついていき、最後まで送り届けるとか、

「公判請求予定だったけれど、急遽方針が変わって、明日釈放なんです」とかいう緊急の事例でも、大至急、記録のコピーをとって対応して、福祉につないでいるとか、

「ほんとかよ?!」と疑いたくなる話が華々しくアピールされているのです。

 

しかし、そんなにアピールするなら、全国で大展開すればいいじゃん?

そんなこと、ほんとに地方でもやってるわけ?、

大阪では、実際の事例にはあたったことないんだけど…、と思っていました。

 

(少し話が横道にそれますが、とある弁護士が、治療的司法研究会というところで質問していました。

「東京で捕まれば福祉につなげてもらえるけれど、地方の支部で捕まれば、起訴されて刑務所行きになるのでしょうか」と。

笑い話のようですが、これ、実はシビアな現実です。

しかし、いくら検察官に起訴裁量があるといっても、全国的視点からみればおおいなる不公平なのです。)

 

 

首都で、ホームレスを極端に嫌う東京には、何か裏で、予算がついたり、福祉関係の裏ルートがあるんじゃないのか?

東京で保護したホームレスを、保護費が安いからという名目で、東北とかの僻地に飛ばして、首都からいなくなるようにするとか…??と勘繰りたい気持ちが抑えられませんでした。

 

そもそも、検察官が、心から、被疑者・被告人の更生なんて、考えてるわけないという気がしません?

99・9%の有罪率に固執して、無罪を出した検察官は能力が低いと評価される、

だから、起訴した以上は絶対有罪にしたい、

そのためなら、無罪の人が有罪になってもいい、なんて、狂気のような愚かな煩悩からすら逃れられない人達が、

「被疑者・被告人の更生保護を考えてます」なんて言ったところで、

何か裏の利益があるに決まっているじゃん、としか思えなかったわけです。

 

 

 

しかし、この年末の緊急事態の中で、ふと「社会復帰支援室」が大阪にもあるはずだということを思い出した私は、

伝言を頼んでいた職員さんに、「社会復帰支援室というのがあるはずだから、そこにつないでくれませんか?」と聞いてみたわけです。

「社会復帰支援室…???」「さいはんたいさくぼうししつ…というのならありますが…」と、おそらくは、内線の転送番号一覧表を眺めながら答えてくれた職員さんに、

私は、「たぶん、それ、それ!そこでいいです。そこにつないで下さい」と言って、電話をつないでもらいました。

 

そうか、大阪では、「再犯対策防止室」というのか…。

(あとでネットで調べてみると、東京以外は、「再犯防止対策室」というらしいです)。

 

つないでもらった電話に出たのは、女性の事務官さん?かなと思うのですが、雰囲気的には、柔らかい雰囲気…。

事件名や被疑者名を伝え、検察官がもう年末年始の休みに入っていること、

しかし、この事例には犯罪性はなく、新しい住居(支援先)を確保できれば、不起訴処分相当と思われること、

そこで、勾留延長してでも、再犯防止対策室の方で対応してほしいこと、を詳しく伝えていったのです。

 

すると、なんと、「その事例はこちらでも把握して知っています。検察官が昨日こちらへ事件を回していきました。」

「今日は、社会福祉士がいるので、おつなぎします」と言うではないですか。

 

少し話をしたところ、(相手はもう事案を知っていました)、勾留延長する必要はないと思っている、

1月5日午前〇時に、最寄りの区役所の生活保護相談窓口に既に予約を入れた。

担当は〇〇さんである、と教えてくれたのでした。

(社会福祉士さんは、障害区分認定の申請もするといいということも教えてくれました)。

 

ただ、検察庁から人は出せず、警察官が区役所の相談窓口前まで送るところまでしか出来ないということで、

私がその時間にそこで待ち合わせて、その後の生活保護申請と救護施設入所まで同行することになったのでした。

 

いやぁ、助かるわー。

正月空け早々、生活保護申請に同行するのは大変ですが、とりあえず、つないでもらえると、こちらとしては非常に助かります。

事件に関する証拠も、被疑者の身上関係も、弁護側には何も正確な情報がない被疑者段階で、弁護側の方の手配でここまでたどりつくのは、容易なことではありません。

何より、検事と違って、物腰が柔らかくて、話が通じるのがいい。

実は、こんな活動をしていたのね、と知った、「再犯防止対策室」初体験の事案でした。

 

(しかし、東京みたいに、被疑者の生活保護支援や福祉事務所への同行まではやっていないようでした。

東京は、公権力側で金と時間をかけてでも、どうしてもホームレスになるのはやめてほしいんでしょうね。)

 

その後、生活保護申請では、窓口の方がいろいろなところへ電話して、引き受けてくれる救護施設を探してくれました。

私は、なごやかな雰囲気を壊さないよう、要所、要所でしか口は出さずに、出来るだけ静かに聞いていましたが、

時々、口を出して、情報を補足したり、記帳されていなかった通帳を預かって、最寄りの郵便局まで走って記帳したりしました。

 

確かに、弁護士がいなくても絶対に申請が出来ないとは言いませんが、病気で、かつ、成育歴に問題を抱えている障がい者ノン場合、コミュニケーションが苦手で、言うべきことを遠慮して言わなかったり、そもそも「この情報は伝えておくべきだ」ということに気づいていないので、弁護士が同行していた方が適切に情報が伝わると思います。

 

待ち時間の間に、障害区分認定の申請書ももらって、担当職員さんが電話であちこち当たって下さっている間に必要事項を記入、

生活保護を申請後、申請書を提出して帰りました。

 

その後、受け入れてくれることになった救護施設へ。

施設の職員さんが丁寧に中を案内してくれて、面談時も横に座って、同席させてもらいました。

 

初めて訪問した救護施設でしたが、印象に残ったのは、こういう救護施設での食べ物の重要性でした。

高齢の方が多い中、きざみ食を用意したり、

味付けは、健康を考えると、本当は薄味がいいのだけれど、あまり薄味にしてしまうと不満が出るので、

あえて少し濃い目の味にして、工夫していると言っておられました。

 

救護施設では、自分で所持できるお金が非常に少なく、1日200円~300円程度しかないので、

食事は本当に重要なこととなり、不満が出やすい要素になるようでした。

(この点だけは、刑務所が抱える問題状況とよく似ているな…と思いました)。

 

いやぁ、非常に勉強になりました。

というわけで、大阪で、初めて再犯防止対策室を体験した今年の初仕事だったのでありました。

 

 

新年あけましておめでとうございます -堀川戎に行ってきました-

新年あけましておめでとうございます。

今年は、5日から、釈放される被疑者を迎えに行って、生活保護申請に同行、救護施設へ送り届けて働いていた私…。

 

7日は、マイドームおおさかで行われた「16th DARS in OSAKA 薬物依存症回復セミナー」にも参加してきました。

 

 

 

お正月気分は早くも消えて、また仕事が始まった…と、ちょっとブルーな気分になりかかっていましたが、

今日はお正月最後のイベント、戎さんの日です。

南森町にある、堀川戎にお参りしてきました。

 

去年は行けないまま終わってしまったので、大反省!

今年はしっかりお参りして、福笹をしっかりゲットしてきました。

 

サラリーマンの方のブログなどを見ると、「もったいない」という気持ちになられるようですが、

我々自営業者は、子宝(吉兆)がじゃらじゃらついた福笹が欲しい気持ちがするもんです。

なんたって、1年間、毎日見続ける福笹なわけで、何だかさびしいよりは、じゃらじゃらついていて欲しいわけです。

たとえ、欲どしいと言われても、人間って、そんなもんなんじゃないでしょうか。

 

本戎の日で、午後8時頃という時間帯もあってか、交通規制で動けない中、他の人が持っている福笹を横目に見ながら、

「笹が2本ついているのが欲しい…」と思った私。

今年は、こんなのをいただいてきました。

 

   

【今年の福笹】                       【こういうのが嬉しい】

たくさん子宝がついてて、満足です。

しっかり福娘さんに授与してもらってきました。

 

戎様には、商売繁盛とともに、「継続的な繁栄とは何でしょうか。そこへたどりつきたい」とお願いした私。

最近、NHKのオンデマンドにはまって休みの日は、NHK番組に浸っている私ですが、

最近、資本主義の限界とか、欲望の限界ってことがよく言われますよね。

若者に職がなく、低所得、若しくは、本当に路上で座り込んでいたりする現象が、先進国も含め、世界中で起こっている中、

このままのシステムではやっていけないはずだ、と感じているのは私だけではないでしょう。

弁護士の世界だって、人数増員が限界を迎えていて、もはや人事ではないですからね。

 

永続的な繁栄っていったいどんなもので、どうすれば到達できるのでしょうか…。

そんなことを考えつつ、結局は、目の前の仕事を1つ、1つこなしていく以外に道はないんだよなーなんて思う、

堀川戎からの帰り道なのでありました。

では、今年も頑張りましょう。

 

「認知症勉強会」@大阪弁護士会 池田学教授をお迎えして

先日、大阪弁護士会館で、認知症研修を実施するための少人数での「認知症勉強会」を開催しました。

講師には、なんと、大阪大学大学院・医学系研究科・精神医学教室の池田学教授を講師にお迎えすることができました。

 

池田教授のご専門は、老年精神医学、神経心理学で、熊本大学在任時代は、いわゆる「熊本モデル」という認知症診療体制を構築された、認知症分野の第一人者です。

 

 

 

 

 

 

 

池田教授にたどりついたきっかけは、今年4月に、神戸地裁で、前頭側頭型認知症の方の万引き事案について再度の執行猶予判決をいただいたことでした。

新聞にも掲載されたのですが、りんごやおまんじゅうなど食品5点、金額にしてわずか800円の万引き事例です。

執行猶予中の再犯(前判決後、約10か月後の犯行)でした。

 

その方は、ご夫婦ともに働き者で、若い頃から、懸命に働いてこられた方でした。

事件当時も、夫婦そろって働いており、お金には全く困っておらず、800円の商品を万引きするなんて、どうしても信じられませんでした。

その方のこれまでの生き方や人生に全く合わないのです。

 

前刑で、執行猶予判決を受けた後は、二度と再犯しないように、

カバンを持って買い物に行かない、財布だけ持っていく、

一人でスーパーには行かない、買い物は対面式の商店街でする、などなど、

約束事を決めて、夫婦で対策を立て、ご主人も協力しながら、きちんと守っていました。

 

なのに、なぜか、その日は、スーパーではなく、他の場所を目指して歩いていたとき、

途中で、毎朝作る野菜ジュースにいれるリンゴがなかったことを思い出し、リンゴを1個だけ買いたいな…とふっと気がそれて、スーパーに入ってしまったのです。

そして、まっすぐリンゴ売り場に行き、リンゴを手に取ったあと、いいな…と思ったお菓子など、食品5点、わずか800円の品を持って、そのまま店の外に出てしまったのでした。

カバンは持っていっていませんから、洋服のジャンバーのポケットに、大きな丸いリンゴなどを入れて、お菓子もポケットに突っこんで、そのままスーパーを出てきてしまったのです。

どうして万引きしてしまったのか、本人にも家族にもさっぱりわからないという状態でした

 

(「え?」という感じがするでしょう?。

しかし、皆さんには信じられないと思いますが、こんな人は結構たくさんいるのです。

そして、裁判では、「情が悪い。」「反省していない。」と言われ、実刑になっているのです)。

 

家族は、いくら何でもこれはおかしいと病気を疑い、私のところへ来られました。

私は、前頭側頭型認知症であることを疑い、その後、さまざまな困難がありましたが、

最終的に、裁判では、再度の執行猶予判決をいただいて、刑務所に送られることは回避できたのでした。

 

この方を救うことが出来たのは、とても嬉しいことでした。

しかし、この1件だけで成果を上げても、他の方々を救うことはできません。

実は、こんなふうに、前頭側頭型認知症の症状のせいで万引きをしてしまったのに、それに気づかれないまま、刑務所に送られているであろう人たちが多数いるであろうことは、弁護士の肌感覚でわかっていました。

刑務所には認知症が疑われる受刑者が多数いるのです。

 

その人達を何とか救いたい。

そのためには、認知症を判別して下さる医師との連携がどうしても必要です。

 

私は、最初、各都道府県や政令指定都市で、認知症疾患医療センターとして、拠点施設に定められている医療機関をあたろうか…と考えました。

大阪区域では、大阪府で6つ、大阪市で3つ、堺市で2つの医療機関が、認知症疾患医療センターに定められています。

そこで、偶然お知り合いだった、大阪精神科診療所協会の医師の先生に、「認知症の刑事弁護のための体制を作りたいのだけど、これらの医療機関をあたってみればいいでしょうか?」とお聞きしたところ、「いやいや、それより、大阪大学大学院に、今年から赴任された、池田学教授という方がおられるから、そこへ行きなさい」と言われたのです。

 

 

そして、大阪弁護士会の刑事弁護委員会の会議にかけ、研修を企画して、その講師として池田教授に来ていただけないかと、突撃のご依頼をして、この勉強会が実施されることになったのでした。

(ちなみに、池田先生は、「DSM-5を読み解く 5」(神経認知症群、…)というDSM-5の解説書の編集担当などもされているのです。

自分が裁判のときに、準備のために買って使った本に、池田先生のお名前が入っているのを発見して、びっくりしました。(^-^)

 

池田教授は、中公新書から、「認知症 専門医が語る診断・治療・ケア」という本を出しておられます。

専門書と一般書の中間くらいのレベルで、分かりやすく書いてあり、初めて弁護士が認知症を知るにはとてもいい本です。

その本もあらかじめ読んでいきました。

しかし、やはり、池田先生の講義を生で受けるのとは大違い!

池田先生は、認知症の原因となる脳の部位から、症状から、昨今、大問題になっている道路交通法の改正が引き起こすであろう混乱まで、わかりやすく抗議して下さいました。

 

講義を聴きながら、「私って、本当に、最高の先生をつかまえて、大阪弁護士会まで連れてきてたんだー」と改めて思いましたね。(笑)。

 

     

 

認知症研修会は、第1回は、「認知症の原因や症状」に焦点をあて、刑事事件を扱う弁護士だけでなく、民事事件を扱う弁護士たちからも好評を博するような研修を目指したいと思います。

来年1月24日に、大阪弁護士会で実施する予定です。

 

第2回目の研修は、まだ日程は未定なのですが、アルツハイマー型認知症と前頭側頭型認知症の刑事事件に的を絞って、弁護実践の研修をやる予定です。

この中で、弁護士と医師の連携体制を構築できれば…と考えています。

 

超高齢化社会を迎え、爆発的に高齢者が増えている現在、認知症対策は、緊急の課題です。

認知症患者の方々は、若い頃は真面目に働いてきた方々が多く、人生の最後になって、病気の症状に気づかれず、刑務所に送られることには耐えがたいものがあります。

 

裁判官たちも、認知症とわかりさえすれば、刑罰を科さないことに異議はないはずです。

そのためには、弁護士が認知症に気づいて、裁判で防御していく弁護態勢をととのえなければなりません。

 

大阪弁護士会の仲間たちと頑張ってみますね。

また、その経過については、ブログでご報告したいと思います。

 

 

 

 

 

研修会@京都「情状弁護の質的転換を目指してー更生支援型弁護を学ぶ―」

沖縄ガーデン訪問と前後するのですが、

沖縄行きの前日である11月18日(金)、

私は、京都弁護士会館地下1階で開かれた日弁連法務研究財団主催の研修会

「情状弁護の質的転換を目指して ―被疑者更生支援型弁護を学ぶ―」に出席していました。                

 

 

 

従来の刑事弁護にはなかった新しい形の情状弁護のあり方は、名付けて、

「治療的司法」、「更生支援型弁護」、「問題解決型刑事司法」とでもいいましょうか。

情状に関する弁護活動のあり方は、「質的転換」の時を迎えています。

 

研修会では、若手弁護士らによって取り組まれている新しい弁護活動が報告されました。

私自身にとっても、自分が取り組む治療的司法なるものがどんなもので、どのような方向性を目指すべきなのか、改めて頭の中が整理される良い機会でした。

 

 

従来の刑事司法では、犯罪は、基本的に、個人の身勝手な意思決定によって引き起こされた行為ととらえており、行為責任主義(だけ)で判断して、刑罰で処罰しようとします。

被疑者・被告人がなぜそんな犯罪行為に出るのかについては、深く考えようとせず、非常に簡単で表面的な「動機」でまとめて、流してしまいます。

心理学や医学、ときには、社会学の知識などに基づいて、その原因を深く検討することはありませんでした。

自分たちの仕事は、判決を出すところまでで、その判決を受けた後、彼らの人生がどんなものになるのかについては、法曹関係者は全くといっていいほど考えてこなかったのです。

 

その結果、刑罰を科しても、根本的な問題解決にはならず、特に嗜癖型の犯罪などでは、いつまでたっても再犯が繰り返される事態が続いてきたのです。

 

しかし、「治療的司法」は、違います。

犯罪や逸脱行動の奥底に秘められた被疑者・被告人の人間的なニーズに着目していきます。

 

人間的ニーズというのは、例えば、社会からの孤立や孤独感、自尊心の低さ(これ重要です!)、漠然とした不安感や疎外感といった精神的な苦痛、虐待やいじめなども含めた被害体験の影響など…を指します。

 

犯罪は、この「人間的ニーズ」を何とかして癒そうとする「自己治癒行為」なのです。

しかし、既に犯罪という問題行動に入っている中で、一人で人間的ニーズを満たして、回復することは困難です。

周囲が問題を共有し、社会的に解決を図っていく必要があります。

そこで、治療的司法では、医療、福祉、心理学、社会学など他業種の専門家らの力を借りながら、人間的ニーズを社会的に解決していくことによって、「犯罪」の根本的な解決を目指すわけです。

被疑者・被告人が、人間的な尊厳を回復し、社会の中で安定して生きられることで、

結果として再犯を防止されていき、

それが、安心・安全な社会へとつながって、社会全体の幸福度も増していくのです。

 

現在の刑事司法の世界では、まだ伝統的な無罪弁護を中心とする価値観が支配的で、治療的司法は、若手を中心とした「新たな動き」に過ぎませんが、

私は、そう遠くない将来、必ずこの治療的司法の考え方が主流になると考えています。

 

その比率は、無罪弁護:治療的司法 = 5:95 程度まで、主従が逆転していくだろうと、私は考えています。

なぜなら、それが被告人のニーズだからです。

選挙権と同じく、人間の価値は全ての人で同じである。

一人一票の原則と同様に考えれば、この比率になるはずです。

 

 

では、研修の中身へ。

第一部の基調講演では、クレプトマニア治療の第一人者である赤城高原ホスピタル院長竹村道夫医師が講師でした。

竹村医師の治療事例数は、どんどん更新されていますが、今では1520例に及ぶそうです。

 

竹村医師は、講演の中で、ご自身と患者とのやり取りの録音音声を10例近く流しておられました。

患者自身の声こそが、聴衆の心に最も響くからでしょう。

 

その中に、私のクライアントである藤乃さん(HPに治療日記を掲載)の声もありました。

音声では、竹村医師が、藤乃さんに、「あなたは実刑で刑務所に行くことが確実なのに、どうしてそんなに笑っていられるのですか?」と質問されていました。

この質問に対して、藤乃さんは、「私が絶望したのは、前回、刑務所に行って何も変わらなかったことです。私は刑務所に行くことは怖くありません。私が怖いのは、それでも、まだ再犯してしまうことなのです。」と答えていました。

懐かしい声を聴いて、藤乃さんを思い出し、少し胸が熱くなりましたね。

 

 

第二部のシンポジウムでは、まず、情状弁護活動の実践例の報告として、さまざまな工夫を重ねながら治療的司法に取り組む3人の若手弁護士からの報告がありました。(コーディネーターは、東京弁護士会の山田恵太弁護士でした)。

 

 

 

クレプトマニアの事案を専門的に扱う埼玉弁護士会の林大吾弁護士は、「普段から考えていたことですけど、今、思いつきました。」(会場:笑)とおっしゃりながら、

①常識を捨てること。(従来の刑事裁判では、必ず実刑になっていた事案でも、罰金刑を獲得できた事例があるということ)、

②最低限の医学的知識をもつこと、

③最後に、信念をもって、弁護活動にあたること、

が重要だと語っておられました。

確かに…。納得です。

 

 

今回、沖縄ガーデン見学にご一緒した第二東京弁護士会の中田雅久弁護士からは、「福祉と連携した情状弁護」と題して、東京TSネットと連携した「更生支援コーディネート」の実践例の報告がなされました。

大阪でいうと、ひまわりの障がい者刑事弁護部会、司法と福祉連携PTの取り組みに当たりますね。

 

さらに、性犯罪について、大阪弁護士会の笠原麻央弁護士から、

健全な男女モデルの欠如(対等な男女が尊重しあい、協力しあう関係性を学習したことがない)や、

健全な形での自尊心や達成感を得られないことが原因となって、

「性加害行動」という偽りの達成感にはしり、だんだんエスカレートしていくメカニズムが示されました。

 

確かに、これが性犯罪の本質ではないかと私も思います。

笠原弁護士は、心理学な情状鑑定の必要性を訴えておられました。

私も賛成です。

 

弁護士からの実例報告のあとは、治療者側・支援者側からの実践例の報告がありました。(コーディネーターは、成城大学の指宿信教授です)。

 

   

 

まず、奈良県で、女性のための依存症回復支援施設「フラワーガーデン」を運営されている、代表者のオーバーヘイム容子氏から、入所者らの生活状況を写したビデオ映像を含めた活動報告がされました。

自尊感情が低く、自分の思いを伝えられない入所者が、入所者同士のコミュニケーションに悩みながら、今までとは違った、自然の中での生活や規則正しい生活を送り、心と身体を回復させて、薬物と決別しようとする様子が報告されていました。

 

いつも、大阪弁護士会で人権養護委員会の修習生のための研修で講師を務めていただき、ご一緒させていただいている大阪府地域生活定着支援センター長山田真紀子氏からは、地域生活定着支援センターの事業の概要や出口支援の現状の報告がありました。

 

また、沖縄ガーデン見学に同行した「東京TSネット」を主催する社会福祉士及川博文氏(海の中に入って、T文字を作っている彼)からは、福祉支援を必要とする被疑者や被告人に対して、いかにして障害に気づくか、その後、どのようにして、その人が必要とする福祉的支援を受けられるようにするかという更生支援コーディネートの実践例が報告されました。

及川さんは、人懐っこくて優しい、若き挑戦者です。

 

 

最後に、立命館大学で家族社会学・臨床社会学に取り組む中村正教授から、締めの言葉をいただきました。

 

このブログの冒頭で語った内容がそれですが、犯罪は、実は、社会の中で孤立し問題を抱えた被疑者・被告人による「偽の問題解決行動」として、「自己治癒行動」の側面があること、

しかし、一人で問題解決を図ることは出来ず、これを放置したままにすれば、孤立と孤独の中で犯罪を繰り返されてしまいかねないこと、

だからこそ、社会の側から支援の手を差し伸べ、社会的に問題解決を図っていく必要性があることが語られました。

この「治療的司法」の動きは、既に世界各国で起こっており、日本は大きく遅れているそうです。

 

世界各国の動きに遅れているという点からいえば、10月に日弁連人権シンポジウムで採択した死刑廃止に向けた決議も同じです。

刑罰制度改革、死刑廃止と同じく、その入り口である刑事司法の場においても、今後、情状弁護の質的大転換が起こってくるでしょう。

 

さて、今日も頑張っていきましょうか。

では、また。

 

沖縄ガーデン訪問記 ~依存症治療の現場から~

東京、京都、沖縄と、研修や見学で忙しくて、

またブログを更新しないまま、しばらく時間が過ぎてしまいました。

 

順序は逆になりますが、まずは、最新の「沖縄ガーデン訪問」から、

ご報告します。

 

 

 

沖縄ガーデンは、これから新しく沖縄にできる、ギャンブル依存症、薬物依存症、アルコール依存症のための回復施設です。

沖縄ガーデンと呼んでいますが、正式名称は、「一般社団法人セレニティーパークジャパン沖縄」です。

 

治療的司法研究会でお世話になっている奈良県弁護士会の菅原直美先生が、奈良ガーデンで、ダイバージョンセンターという形で法律相談をしておられ、新しく沖縄にも回復施設が建設されるというので、見学に同行させていただきました。

私は、ワンネスグループの施設訪問は初めてです。

 

本当は、訪問時には、建設が完成しているはずだったのですが、
沖縄の工事は、とにかくゆっくりしていて、時間がかかるのだとか…。

電柱がまだ来ていないので、電気が引けません、

じゃ、いつ来るんですか?、

さぁ…、しばらくすれば、来ると思いますよ、という感じだそうで、訪問時はまだ建設中だったのですが(笑)、お邪魔させていただきました。

 

空港まで迎えに来ていただいた後、まずは、腹ごしらえ。

地元のおいしいお店を案内していただきました。店内は畳敷きで、地元の方でにぎわっています。

私は、沖縄ソーキそばをいただきました。

 

   

 

その後、南城市にできる依存症施設へ。

まだ建設中でしたが、広くて、明るい感じ。

目の前に海辺の景色が広がっていて、解放的な南国の雰囲気が漂っています。

 

    

 

    

 

 

ここで、職員江口さんから、ワンネスグル―プの取組みや、
依存症からの回復のための取組みの流れについて、教えていただきました。

 

   

その後は、一度、海辺の喫茶店で休んだ後、

夕方6時半から、ガーデンの方が講師をされる「依存症を知るセミナーin那覇」に参加するため、那覇市へ移動。

 

   

 

喫茶店のテラスから眺める海の素敵なこと!

 

お勧めメニューのようだった、「くるくまぜんざい」とアイスコーヒーを頼んだのですが、

このくるくまぜんざい、とにかく、豆、豆、豆。なんでこんなに豆がたくさん入ってるの?

本土のぜんざいには、こんなに豆は入ってないよ。

さすが沖縄…。あなどれない。(私も仲間の弁護士もお腹いっぱいになってしまいました)。

 

   

依存症セミナーでは、今日のテーマは、「中高年の依存症」です。

もちろん、若者にもネット依存症など、重要な問題はあるのですが、(合法的な精神薬依存などもあるでしょうね)、

現在では、覚せい剤などの薬物依存症は、若者より中高年の再犯が多く、

人生の節目を迎える中高年者にとって、重大な問題となってきています。

 

 

セミナーが終わった後は、沖縄ガーデンが経営する「KENDAMA」(けんだま)というラーメン屋さんへ。

働いているのは、沖縄ガーデンのメンバーということで、施設長で案内役を務めて下さった泉さんも、

お昼はお店に立っておられるのだそうです。

 

中は、スタイリッシュなイメージ。

オリオンビールとお勧めの塩ラーメンをいただきました。

横についているネギのにんにく(かな?)がおいしいのです。

最初は、ネギは入れずに、あっさりとした塩味だけでいただきます。

化学調味料はどは一切使っていないというだけあって、あっさりとして、すっきりしたお味。とてもおいしいです。

塩味だけで少し食べた後は、ネギとエキスと入れて召し上がれ。

途端に、とても深い、濃いお味になるから不思議です。

 

ちなみに、このから揚げは、一皿250円なのですが、なんとおかわり自由なのだとか!(驚きです!)。

高校生が大量におかわりしていくそうです。

 

   

 

   

 

 

ケンダマを出た後は、ホテルへ。

今回は研修旅行で、節約旅行。

訪問は土曜日で混んでいたため、ぴっちり隣り合ったツインベッドに2名が眠り、ちょっと大変でしたが、

それもまた、いい思い出となりました。

 

 

翌日は、海辺のビーチで、グループワークをするため、ガーデンの方が運転して下さるハイエースに乗って、

海辺を目指します。

(海の色が違うです。なんて綺麗な海…)。

しかし、あいにくの雨が…。              

そこで、急遽、海辺にある喫茶店で、(といっても、十分開放的です)、2組に分かれて、セッションをすることに。

 

    

 

私はBグループだったのですが、なんと担当のガーデンの方は、

私が先日、大阪弁護士会で講演を聞いて、ギャンブル依存症に取り組む田中真紀子さんのインタベンション(介入)を受けて、沖縄ガーデンにつながった方でした。

田中さんと会って、「このままだと死ぬから」と言われ、仕事を辞める間もなく、

そのまま、沖縄行きの飛行機に乗せられたそうです。

 

職場には迷惑をかけたと思っていましたが、後に電話したときは、職場の誰もが、全然大丈夫だよ、

治療につながって良かったと、喜んでいてくれ、彼を責める人は誰もいなかったそうです。

 

セッションを終えた後は、海辺でしばらく絶景の海を見てすごし、(若い子たちは、波に入って遊んでいました)。

 

   

 

 

   

 

 

さらに、すごーく高い橋の上の絶景ポイントに連れていっていただき、景色を鑑賞したりして過ごしました。

 

   

 

 

さらに、海辺の喫茶店で、ベリージュースと焼カレーをいただき、波とたわむれて夕刻までの海辺の時間を楽しみました。

 

    

 

    

 

   

 

   

 

2日間、案内していただいた沖縄ガーデンの泉さん、江口さん、ベックスさんには、感謝、感謝です。

 

その後は、日曜の夜だったため、値段が安く、少し奮発して泊まることが出来た瀬長島ホテルへ戻り、とりあえず温泉へ。

ここは、昨年開業した、テラス型の店舗と一体になった、とても雰囲気のいいホテルで、温泉や露天風呂もあるのです。

 

国際どおり方面へ出て、弁護士と社会福祉士、地元の臨床心理士で、夜遅くまで語りあかし、お開きとなりました。

 

    

 

しかし、こんなにゆったり時間が流れたのは、何年ぶりでしょうか…。

南国の雰囲気に加え、沖縄ガーデンの方々のご協力のおかげです。改めて、感謝です。

 

今後、南城市の施設が完成したら、私のクライアントの方にも、この施設をご案内させていただきましょう。

重症者の場合、今まで住んでいたのと同じ場所やその近郊では、回復は期待できません。

環境を変えないといけないのです。

 

例えば、大阪なら、西成に行けば、覚せい剤が買えることはわかっているし、向こうから電話がかかってきたりしますから。

本気で止めたいなら、大きく場所を移動して、生活環境を変えていくしかないのです。

沖縄ガーデンの完成が楽しみです。

 

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