17th 三重ダルクフォーラムに参加してきました ~依存症回復の最先端~

昼間は暑いくらいですが、夜は肌寒い感じの日が続いていますね。

お元気ですか。

 

私は、この週末、事務所の引っ越しを終了しました。

同じビルの3階から6階へ移動しただけなので、負担は軽かったのですが、この機会に要らない資料や雑誌を全捨てしたり、前準備は大変でした。

(たまるんですよね、これが…)。

今は、狭いながらも自分の机に落ち着いて、窓の横から見える高速道路の景色を眺めています。(夜は綺麗です)。

 

 

さて、先週の土曜日、10月24日、三重人権センターで行われた「17th 三重ダルクフォーラム」に参加してきました。

 

 

以前から、三重ダルクの市川岳仁さんが、薬物依存症と知的障害・発達障害などの重複疾患の問題に積極的に取り組んでおられることは存じ上げており、興味があって、一度お話を聞いてみたいと思っていました。

しかし、三重で10時から開始のフォーラムに間に合うためには、朝7時前に自宅を出ねばなりません。

もともと宵っ張りで朝が弱い私は、引っ越しでお疲れ気味のこともあって、ひるんでいたのですが、

いつも薬物事案で連携していただいているNPO法人アパリの尾田さんが、

「最先端のフォーラムだから参加すべきですよ。三重駅から車で送ってあげますよ。」と言って下さったので、
行く決心をし、(尾田さんは、千葉から車で来られていました)、

金曜日に「あとは業者さんにまかせた!」というところまで荷物をまとめて、
えいやっ!と頑張って、朝早起きして、参加してきました。

 

いやー、行ってよかった ♪♪♪

薬物回復施設の最先端を走る方々の考え方や取り組みがよくわかり、すごく勉強になりました。

 

 

午前の部は、パチンコなどギャンブル依存を支援してこられた経歴をもち、
現在は、沖縄で、コーヒー栽培や販売を手がけるB型就労支援施設を運営しておられる横山順一さん。

  

 

 

施設はちょっとおしゃれで、居心地のよい普通のおうちのような印象です。

障がい者や依存症者を支援しながら、コーヒー栽培をして、商品化する苦労を語って下さいました。

印象に残ったのは、定価900円で空港などにおいてもらえる商品を開発したときのこと、
パッケージなども勝手に決められてしまい、その他流通等を担当する関係者の中で、
コーヒーを生産している施設の取り分は、たった30円とされたそうです。

 

納得できず、抗議して、50円まではあげてもらえたけれど、その他の関係者の取り分は変わらなかったそうで、公平・公正ではないと感じたようです。

自分たちで営業をすべきだった、空港などにおいてもらえると思って、欲を出したのがいけなかったと述べておられましたが、

障がい者の就労施設として、買いたたかれてしまう様子が伝わってきました。

 

その後、市川さんと横山さんの、舞台上のソファに座っての対談がありました。

 

    

 

市川さんは、かっては、薬物依存症者は、どこまでも「当事者」だった。

自分たちもそれをよしとして、当事者でなければ、依存症はわからないことを強調してきた。

会合などでは、医療関係者や行政関係者などが出てくる中で、いつも、「当事者」枠がある感じだったが、

当事者は、どこまでいっても「当事者」であり、

例えば、自分は精神保健福祉士の資格をとったが、精神保健福祉士としてではなく、やはり当事者として扱われる。

学校を出たり、資格をとったりしても、「当事者枠」を出ない。

それでいいのか…、

もっと「地域」の中で、普通に生活していく必要があるのではないか、と思った。

 

さらに、ダルクは、「当事者」によるミーティング形式を唯一の回復手段としてきたが、

実際には、それがぴったりはまる人もいるものの、それがうまくはまらない人もいる。

 

知的障害や発達障害と薬物依存症の重複疾患者がその典型で、彼らにとっては、ミーティングでの自己洞察はあまり役に立たない。

当事者性を強調し、自助によるグループミーティング形式だけを回復手段とせずに、多様な手段を取り入れて、地域内で、普通に生活していけるようになることが重要なのではないかという趣旨のことを話しておられました。

 

この点、ギャンブル依存症を支援してこられた横山さんも同じ趣旨のことを述べておられました。
ギャンブル依存の人達にとっては、ミーティングにはあまり実益はなく、生活リズムの確保や生活再建の方が有効です。

要するに、その人が抱えている問題ごとに、個別に対処していく必要があるとのことでした。(個別性)

 

この点は、刑事弁護をしている私も全く同じ考えです。

私も、かっては、少なくとも薬物犯については、ある程度の定型性があるはずだから、
保釈をとって、条件反射制御法による入院・治療をすることで、
どの弁護士でも対応できる程度に、定型的に対処できるのではないか。

そうすることで、年間1万人以上いる、薬物犯となってしまった人たちを更生させることが出来るのではないかと考えていました。

あれから、何年だったでしょうか。

5年くらいたったでしょうか。

(汐の宮の中元医師とアパリの尾田さんと一緒に大阪弁護士会で研修をしたのは、5年前くらいだったような気がします)、

 

実際に自分で試してやってみて、今は、薬物犯であっても、定型的な対処はできない。

「個別性」こそが重要だ、と考えるようになりました。

 

重症化して、覚せい剤精神病を発症してしまうくらいになると、その人がなぜ薬物を使用しているのかがわからなくなってくるので、 かなり定型的になってくるのですが、(それ以外に対処のしようがない)、

覚せい剤依存症のレベルにとどまっている限りは、なぜその人が薬物使用に依存しているのか、その理由は千差万別で、かなり個性があるのです。

(特に、まだ症状が軽いうちには、その人ごとに、個性と特徴があります)。

 

その個別の問題性を無視して、定型的に処理しようとしても、うまくいかないのです。

個別に対応しようとすると、一見、手間暇がかかり、時間がかかるように見えるのですが、定型的に処理しようとして、失敗することを考えると、結局は早道なのです。

まさに、「急がば回れ」。

自分自身も弁護士として、そんな実感をもっていた私は、回復現場の最先端に立たれる市川さんや横山さんも、同じ感想を持っておられるのだな…と、興味深く話をお聞きしました。

 

さらに、市川さんは、かってのダルクは、各施設が完全に独立していて、一からすべて、各施設ごとに立ち上げねばならなかった。

しかし、相互にもっと強力しあってもよいのではないか。

例えば、横山さんの施設で作ったコーヒーを、三重ダルクオリジナルコーヒーとして販売することで、相互にとって利益が得られる。

このように、自立しながらも、互いに協力しあい、助け合う姿勢が重要なのではないかということを話しておられました。

 

その流れの延長線上にあるのだと思いますが、
現在では、ネパール・カトマンズの薬物回復団体から紅茶を買い付け、販売する「ナマステ・プロジェクト」に取り組んでおられるそうです。

 

フォーラムには、ネパールのスーヤス・ラジハンダリさんも参加していました。

 

さらに、この三重ダルクフォーラムは、三重県との共催だったため、精神保健福祉センターの方や、三重刑務所、三重保護観察所の方々のお話もあり、とても友好的な協力関係が築かれている様子が感じられました。

まさに、未来の理想図ですね。

 

   

 

休憩の際には、沖縄の施設で生産し、三重ダルクオリジナルとして販売しているコーヒーや紅茶が振る舞われました。

私は、チャイを2杯と、コーヒーゼリーをいただいて、お腹いっぱい。

 

レモングラス、ダージリン、チャイの3種の紅茶のセット(1000円)と、三重ダルクオリジナルコーヒー2袋(1袋に2パック入って150円)を購入しました。

 

   

 

また、お昼には、200人分のお弁当(から揚げ、チキンナゲット、マカロニサラダ、きんぴら、シャケ入りおにぎり、パンなど)が振る舞われました。

これは、現在、三重ダルクが、就労継続支援B型事業所として運営している「おかずやさん(和風お惣菜屋)」のメンバーが、朝3時起きで作ったものだそうです。、

官公庁や病院、イベントなどで販売しているそうですが、最近は人気が出て、完売するようになったというお話でした。

 

おもしろかったのは、このフォーラムで壇上にたった方々が、皆、人前で話すことが苦手ならしく、目を合わせたがらない方々だったこと。

市川さんは、昔から雄弁に話す方でしたが、パワーポイントを使って、1時間以上の話をなさった横山さんでさえ、
途中何度もとまりながら、コーヒーを飲まれます。

また、お弁当を作った「おかずやさん」のメンバーも、突然、壇上に呼ばれたのですが、皆、マイクを持つことを嫌がり、

ちょっとうつむき加減で、目を合わせたがらない。(笑)。

 

市川さんがこの事業を立ち上げようとしたとき、まずリーダーになる人を選び、その人に、「誰となら一緒にこの仕事ができると思う?」と聞いて、リーダーになる人に、メンバーを選んでもらったそうです。

 

その結果、集まったのは、全員、人と目を合わせたがらない人ばかりだったとか。(笑)。

面白いな…と思いました。

(弁護士は、とりあえず、ペラペラしゃべりますからね)。

 

現代は、対人コミュニケーションが重視される社会で、これが苦手な人は、居場所を失いがちです。

生きる辛さに、薬物に依存してしまうことになるわけですが、

対人コミュニケーションが苦手な人も、その能力を発揮できる環境つくりというのが重要なのだな…と感じました。

(ただし、言うはやすし、行うは難しです)。

 

現在の回復支援現場の最先端の考え方、現状が感じられる有意義なフォーラムでした。

あらためて、尾田さん、車に乗せて下さってありがとうございました。

(朝早いのと、津駅からバスということにひるんでいたので、尾田さんの一声がなかったら、行ってなかった可能性大ですね)。

 

 

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