加藤さんのお話2 ~薬物依存症者の性格傾向「断れない」~

今日は、加藤さんのお話PART2 薬物依存症者の性格傾向「断れない」をお送りします。

月日の経つのは早いもので、「加藤さんのお話と木津川ダルク訪問記」を書いてから、はや数年が経ちました。

木津川ダルク代表の加藤武士さんとのお付き合いは、その後も続き、たくさんの保釈中の被告人を引き受けていただきました。

最近では、
保釈中の入寮にとどまらず、
大阪の天満にあるドーンセンターで、「家族教室」における家族支援、
(NPO法人アパリウエスト・木津川ダルク主催/加藤さんが講師です/木津川ダルクのHP参照)
③ 各地で開催されている、NA(薬物依存症者の自助グループ/ナルコティクス・アノニマスの略)への参加を通じたつながりでも、
被告人本人と家族をじわじわ~っと支援していただいて、大変お世話になっています。

                  

今日は、ある被告人のケース(HP掲載のモグラさんについて、加藤さんが書いてくださった上申書の内容が、薬物依存症者の特徴を突いていて、なかなか興味深い内容だったので、HPでご紹介させていただきたいと思います。

題して、「薬物依存症者の性格傾向:いい人でいたい。僕/私、断れないんです」

このケースは、薬物依存症のモグラさんが、友人でもなければ、特段深い知り合いでもない人物から無理な頼み事をされて、断れずに引き受けてしまった、

その結果、無理な頼みごとをした相手ではなく、自分の方が刑務所へ行かなければならなくなって、大変なことになっている、という事案でした。

 

加藤さんは、以前、そのモグラさんと会ったことがあったのですが、NAで再会し、支援を頼まれ、上申書を書いて下さいました。

その上申書に、こんな言葉が書いてあったのです。

「再会して、事件の経緯を聞いていると、逮捕に至るこれまた残念な経緯に落胆しました。
薬物依存症者は、どうしてこうも同じ落とし穴にはまるような失敗を繰り返してしまうんだろうと思いました。
そこが病気たる所以であるわけですが、何とか力になりたいと思いました。」

そこで、私が、「これはどういう意味ですか?」
「薬物依存症者が繰り返す、同じ落とし穴にはまるような失敗って、どういうことでしょうか?」と尋ねたのです。

その回答が、こんな感じです。

加藤さん: いやー、親切心というか、お人好しというか、どんな場面でも、いい人でありたい、ってところがあると思うんですよね。

本当は、もっと大切な人(家族、仲間)がいて、守らなければならないものがあるのに、
何となくいい人になって、引き受けてしまう。

いい人を演じてしまうというか…。
はっきりNO!と言うべきなのに、それが出来ずに引き受けてしまうんです。

その結果、頼みごとをしてきた人より、自分の方が困った状態になっちゃうというか。

薬物依存症者には、このタイプの失敗が、本当にすごく多いんですよ。

しょせん、友達じゃないし、世話になったわけでもなければ、恩があるわけでもないのに、NOが言えずに、応じてしまう。

本心では嫌だと思っていても、はっきり人に言えないまま、引き受けてしまうんです。

きっと、頼み事をされたとき、即答しちゃってると思うんですよね。
「ちょっと考えさせてくれ。」と言って、いっぱくおけばいいのに、すぐその場で引き受けてしまうんですよね。

安易にいい人でいようとすることが、自分自身を苦しめてしまうというか…。

私: それは、どうしてそうなってしまうのでしょうか?

加藤さん: 人とのつながり方や、関係の取り方がおかしいんだと思いますよ。

生き方そのものを変えないといけないんですよ。
しかし、自分も薬物依存症だったときは、そういう面があったからなー。

私: 断れない薬物依存症者に、「そういうところがダメなんだ!もっとはっきり断れ!!」って言うだけじゃ、何も変わらない気がしますよね。

だって、気合いを入れるだけで断れるなら、こんなことになってないでしょうし…。
それが出来ないから、困っているというか。

薬物依存症者が、そういう性格傾向を乗り越えて、無理な要求や頼み事をされても、しっかり断れるようになるには、何を乗り越える必要があるのでしょうか。

 

例えば、加藤さんご自身のケースや、身近でたくさん回復する方たちを見てきて、そこのところは、どう思われますか?

加藤さん: そういう無理な要求を跳ね返せるようになるのは、
「今、自分がこうあるのは、自分の力だけではない。

いろんな人の力があって、今の自分があるんだ」っていう、感謝の思いがあるからでしょうね。
誰かのことを考えて、立ち止まるというか。

今、ここで、この要求に応じてしまったら、他の人達の協力を無にしてしまう、
それは出来ない、という思いかな。

「自分の力だけで、自分はやってきたんだ」という傲慢さがあると、立ち止まれないと思います。

: す、すごく奥深い精神論ですね。
(12ステップに通じますよね。というか、12ステップそのものというか…)。

  その境地まで到達できて、はっきり断れればいいんですが、そう簡単に断れない薬物犯の人達は、具体的には、どうすればいいのでしょう?

加藤さん: さっき言ったけど、即答しなければいいと思うんですよ。

薬物の人って、頼まれるとすぐ、その場で引き受けちゃうから。
「あとで、折り返すから。ちょっと考えさせて」って、一拍おいて、その間に、誰かに相談すればいいんですよ。

私: あっ、そうか。
周囲の人に相談して、断る言葉を練って、作戦を練ってから、断ればいいんですよね。

それに、「後で折り返し連絡するから。考えさせて」って言えば、場合によっては、相手の方から、「あ、こいつは断ってくるな」と思って、去っていく場合もありますよね。

加藤さん: そうそう!

というわけで、今日の復習です。
皆さん、アドバイスを胸に、回復していきましょう!

 

    

 

薬物依存症の性格傾向:
「何となくいい人を演じてしまい、相手の無理な要求を断れない」を克服する方法

① 目の前の人は友達でも何でもない。もっと大切な人(家族、仲間)がいることを思い出せ!

② 大切なのは、「今、自分がここにあるのは、自分の力だけではない」という感謝の念。

それがあれば、「今、ここで自分が負けたら、他の人の協力を無にしてしまう。それは出来ない」という気持ちがわいて、立ち向かう勇気が出るはず。

③ 具体的には、とにかく、即答を避けよ。
「ちょっと考えさせて。後で折り返すから」と言えばいい。

④ それから、周囲へ相談。断り方を練ってから言えば、断れるはず。

               

 加藤さん:バンクーバーの警察ミュージアムにて(アルコール依存症などの保護房だそうです)

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2019 弁護士西谷裕子WEBSITE All Rights Reserved.
法律事務所(弁護士)専門ホームページ制作 nishitani.yuko-lawyer.com